企業法務コラム

円高を契機に海外生産・販売が加速か=東商アンケート

東商が会員中小企業等2054社を対象に行った「中小企業等の円高への対応に関するアンケート」の集計結果が10月15日発表された。
円高が与える影響については、業種で大きく違いがみられる。製造業では「デメリットの方が大きい」が45.5%で、「メリットが大きい」の11.1%の4倍。卸売業では「デメリットの方が大きい」が33.5%、「メリットの方が大きい」が32.1%で両者は拮抗。小売業は 「デメリットの方が大きい」が12.5%で、「メリットが大きい」の19.3%の3分の2。
円高の影響について「デメリットの方が大きい」と回答した企業が、具体的効果として挙げたのは、「取引先の業績悪化による受注量の減少」が45.7%、「取引先からの値下げ要請」が41.5%、「取引先の海外展開による受注量の減少」が33.3%、「低価格輸入品の流入による競争激化」が24.3%となっている。
円高への今後の対応策を業種別にみると、「経費削減(人件費を除く)」が多いが、製造業においては、約2割以上(21.7%)が「海外での生産・販売拠点の拡大」と回答しており、円高を契機に、海外での生産・販売が加速しそうだ。

※参考
2012年10月15日 東京商工会議所ホームページ
『中小企業等の円高への対応に関するアンケート』集計結果
http://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=22231

(評)
議論は、すでに「海外に展開すべきかどうか」ではなく、「海外のどこに、どうやって展開すべきか」の議論に移っている。中には取引先が海外に生産拠点を移したため、自分たちも移らざるを得ないという企業も多いだろう。
海外展開先の有力候補の第1は今でも中国だろうが。中国進出はリスクも大きい。余り意識されていないのが撤退するときのリスク。中国はまさに「行きは良い良い、帰りは怖い」。移転先の地方政府は、税制を優遇したりして歓迎一色だが、いざ撤退するとなると、税金やら何やらで中国で儲けた金を一気に吐き出させる。そのため中国から撤退するときは、右足をそろり、左足をそろりで、徐々に時間をかけて撤退する必要がある。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2012年10月18日
法律事務所ホームワン