企業法務コラム

パナソニック7650億円赤字。のれんの減損損失も響く

パナソニックは10月31日、2013年3月期連結決算の業績予想を下方修正し、最終損益を従来の500億円の黒字から7650億円の赤字に引き下げた。過去最大だった12年3月期の7721億円の赤字に迫る規模。2年度を合計すれば1兆5371億円にもなる。
従来の黒字予想が一転して巨額赤字となるのは、薄型テレビなどデジタル家電の価格下落による収益悪化に加え、携帯電話事業やリチウムイオン電池、太陽電池事業に関するのれんの減損損失2378億円など事業構造改革費用を3555億円計上するため。また「繰り延べ税金資産」の取り崩しを迫れたことも響いた。

※参考
2012年11月1日 日本経済新聞朝刊
「パナソニック7650億円赤字 今期も大幅損失、63年ぶり無配 規模より採算めざす」

(評)
のれんの減損損失を説明したい。
A社がB社を10億円で買収したが、当時のB社の簿価総額は8億円だったとする。そうするとA社の資産の部の現金10億円のうち8億円はB社が保有していた現実財産に置き換わり、差額の2億円はのれんとして資産計上される。ところが、2億円も多く出して買ったB社の事業の収益が悪化し、投資額の回収が見込めなくなると「あの2億円は意味がなかった」ということで、減損されるのだ。

携帯電話事業、リチウム電池事業は韓国企業に敗れ、太陽電池事業は中国企業の価格競争に敗れた。パナソニックは「事業拡大の追求から収益優先に転換する」という。
収益が悪化した企業を立て直すにはどうしたらいいのか。それは経費削減と売上増加。しかし売上を増やそうと思えば経費も増えるので、そのバランスが難しい。売上が大きくなればその分運転資金も必要になるため、思ったように売上が伸びないとなるとかえって収益が悪化することにもなる。設備投資をすれば銀行からの借入も増える。ここが経営の難しいところで、「このまま座死するくらいなら、打って出よう」ということで設備投資をするか、それとも「風邪をひいた病人が泳ぎをするようなもの。今は経費削減で乗り切ろう」ということなのか。パナは「収益改善」の道を選んだのだが、ここまで赤字を作ってしまえば、規模の拡大はしたくてもできないだろう。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2012年11月02日
法律事務所ホームワン