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国交省、三菱自工に対する立入検査の結果を公表 過去の失敗例を教訓に
三菱自動車工業は、軽自動車のオイル漏れの不具合に関し、10年11月から12年12月にかけて4回のリコール届出を行っているが、12年12月25日から27日にかけて、リコール業務の実施状況及び当省への報告・説明等を確認するため立入検査を実施し、その結果が4月23日に発表された。
三菱自工は、05年2月に不具合情報を入手したが、結局、08年1月に本件不具合に関しリコール等の市場措置を行わないことを決定。国交省からの継続的な指導の結果、ようやく10年11月11日に第1回リコール届出を行い、その後、対象車種の選定を誤ったとして、3回にわたり追加リコールを行っていた。
同省が指摘した問題点のうち問題と思われるのは、次の点。
・販売店から、不具合情報が上がってきていたにも関わらず、同社として確認できていないという理由のみで「抜け不具合はない」とした。
・販売店に対する不具合情報の発信の指示が徹底されておらず、市場からの不具合情報を十分に吸い上げられていなかった。
・08年1月に「措置不要」の結論を出してからの2年以上、原因究明作業が実質的に行われなかった。
・第1回リコール届出後、その時点でリコール対象とならなかった車両における不具合について原因究明が適切に行われなかった。
※参照
2013年4月23日 国土交通省自動車局
三菱自動車工業(株)に対する立入検査(特別監査)の結果
http://www.mlit.go.jp/common/000995856.pdf
(評)
ハインリッヒの法則というものがある。米国の損保会社で技術・調査部副部長をしていたハインリッヒが発見、1929年に論文発表されている法則である。
彼は、ある工場で発生した労働災害5000件余を統計学的に調べ、計算し、以下のような法則を導いた。「重傷」以上の災害が1件あったら、その背後には、29件の「軽傷」を伴う災害が起こっており、さらに300件もの傷害のない災害が起こっていたことになる。
計算上は、「傷害のない災害」すなわち「ヒヤリ・ハット」を初回発生時に対策を講ずれば、重大事故は防げることになる。この事例で行くと、1販売店から不具合情報が上がってきたら、他の販売店でも同様の不具合情報が上がっていないかを調査し、他にも不具合例があれば、さらに調査を進めていく姿勢が求められる。そして1車種で不具合が発生した場合、同じ部品を使用している他の車種でも(他の製造年の車両)でも同様の事故がないか調べる必要がある。
ここで思い出されるのが、三菱自工が起こしたホイール脱落事故。この事故では、品質保証部門の部長と、これを補佐していた管理職が業務過失致死傷で地裁、高裁で有罪となり、上告棄却で確定している。原因はフロントホイールハブの強度不足による脱落であったが、高裁は「強度不足」ではなく「強度不足の疑い」があれば、リコール義務があるとした。
三菱自工はこうした過去の失敗例を教訓にできていないのではなかろうか。
法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹
2013年04月25日
法律事務所ホームワン