企業法務コラム

3Dプリンタ活用へ 政府支援の動き

11月12日、経産省が「新ものづくり研究」第3回会合を開催した。新ものづくり研究会は、3Dプリンタに代表される新しい技術の、製造業における活用法について有識者が議論するもので、10月15日に第1回が開かれ、12月17日開催の第4回会合で、政府支援のあり方などを含めた取りまとめの骨子案を示す。
第2回では株式会社コイワイが、従来の木型工法の10倍のスピードで造形が可能になったと報告。第3回では、パナソニックからは3Dプリンタの現在の課題を克服できれば、「リードタイムを100分の1にするモノづくり」が可能になるとの報告があった。
従来の工法と比較しての3Dプリンタの課題として、これまでの会合では次の点が指摘されている。

・装置・材料ともにコストが割高
・積層圧、速度、積層条件などの設定の自由度が低い
・完成した製品の反りやうねりなど、加工精度の限界がある
・量産試作の面では、材料の強度や耐久性が低いことで量産品の検証が難しい。
・本格活用では適用できる金型サイズの拡大、耐用ショット数の引き上げが必要
・中国製品と競合できる低コスト化が必要

また、3Dプリンタの活用促進の観点からは、第3回会合で、中小企業で三次元CADの普及が遅れており、大手が活用を本格化した場合にサプライチェーンとして対応が遅れかねないなどの問題点が出された。

※参考
2013年11月13日 J-Net21中小企業ビジネス支援サイト
新ものづくり研、中小の3Dプリンター対応の遅れを危惧-政府支援など検討
2013年10月30日 fabcross
経産省「新ものづくり研究会」第2回会合で3Dプリンタの活用事例について意見交換

(評)
3Dプリンタとは、コンピュータで作成した立体の画像を、三次元のモノとして造り出す装置を指します。コピーではインクジェットが使われますが、インクと同様に素材「コンシューマブルズ(消耗品=材料)」を吹き付ける要領で造形します。最近までは素材がアクリル樹脂等しかなく、精度も低く、利用範囲も限られていたが、現在は改良も進み、金属素材も利用可能な、精度の高い機器も市場化されており、開発研究過程で金型として利用されている。ただ耐久度の問題もあり、量産金型として利用するのは無理だが、多くの先進企業が3Dプリンタの活用で、開発スピードを大幅にアップする等の成果を上げている。
米国では、オバマ大統領が3Dの利用技術の開発、普及に力を入れており、国内にこうした開発・普及のための施設も立ち上げている。この点、日本は大きく出遅れている。日本のモノ作りは、熟練工による高い金型技術によって支えられてきたが、この3Dプリンタの登場でその優位性が大きく崩される可能性がある。オバマ政権が3Dプリンタ利用技術の開発・普及に注力するのも、製造業復活という政策目標達成のための知有力な手段と考えているからだ。
昭島市にある東京都立産業技術研究センター多摩テクノプラザは、中小企業向けに3Dプリンタの利用を提供しているが、こうした施設をもっと増やす必要があるだろう。新ものづくり研究会の議論を注視したい。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年11月18日
法律事務所ホームワン