- 銀座の弁護士による企業法律相談TOP
- 企業法務コラム
- 日立元SEら他業者の入札資料を不正入手 入札妨害疑い
日立元SEら他業者の入札資料を不正入手 入札妨害疑い
国立国会図書館の入札情報を不正に取得して入札を妨害したとして、警視庁捜査2課は29日までに、同館のネットワークシステムの保守運用業務を担当していた日立製作所の元システムエンジニアを公契約関係競売入札妨害容疑で書類送検した。送検容疑は昨年8月、同館のネットワークシステムに不正にアクセスし、競合他社の提案書や見積書などを入手。同僚社員にメールで伝えるなどし、公正な入札を妨げた疑い。
※参照
2014年10月29日 日本経済新聞
(評)
競売、入札は、参加者の公正かつ自由な競争によって行われることにより、債権者や競売・入札施行者の利益が確保されるため、刑法は競売・入札妨害罪を設け、「偽計または威力」を用いて、この公正かつ自由な競争を害する行為をしたものを罰している。
バブル時代は、民暴事件全盛時代で、暴力団関連の競売妨害罪が横行していた。競売物件を不法占拠したり、競売物件に組の看板を掲げたり、裁判所で公開している競売資料(物件明細書)に暴力団員の名刺をはさんだりと言った、ベタな事件が多かった。その後、民事執行法の改正や、暴対法の施行などで、こうした妨害行為は殆どなくなった。むしろ、非暴力団員による「偽計」による経済事件が主流になって来た。
「偽計」とは、人を偽罔(ぎもう)し、または人の不知、錯誤を利用することを言い、詐欺罪における詐欺よりも広い概念である。これまで、偽計による本罪違反としては、役所の担当者が特定の業者に予定価格ないし他者の入札情報を漏洩する、競売物件の占有者が虚偽の賃借権を主張し現況調査報告書にその旨を記載させる、と言った行為が典型であった。しかし、最近は本件のような類型のものが増えてきた。
上記報道には競売入札妨害罪で送検したとのことしか書かれていないが、少なくともSEに対しては不正アクセス禁止法違反の併合罪で送検しているはずである。
刑法第96の3第1項
偽計又は威力を用いて、立入り、占有者の確認その他の強制執行の行為を妨害した者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
不正アクセス禁止法 第3条
何人も、不正アクセス行為をしてはならない。
同第11条
第3条の規定に違反した者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹
2014年11月14日
法律事務所ホームワン