企業法務コラム

【企業法務】有名回転ずしチェーン おとり広告で措置命令を受ける

消費者庁の6月9日付で公表したところによると、回転ずしチェーン「スシロー」を全国展開する「あきんどスシロー」が、実際には品切れになったり、まだ提供されていないウニやカニ等の特売をうたったキャンペーン広告を出し続けたのは「おとり広告」に当たるとして、同庁は、9日、同社に再発防止を求める措置命令を出しました。

「おとり広告」とは聞きなれない言葉だと思いますが、景品表示法5条3号で禁止される行為です。
景品表示法は、誇大広告等の不当な広告を禁じています。「おとり広告」とは、典型的には実際には売っていない商品を広告に載せる行為を言います。
お客さんとしては、目玉商品に引き寄せられて、店舗に行ったら、お目当ての商品はないですが、せっかく来たんだからなんか買って帰ろうかということになります。そうした、ずるいやり方で消費者を騙してはいけないということで、おとり広告が禁止されているのです。

調査した消費者庁、公正取引委員会によると、同社は2021年9~11月、テレビCMや自社のホームページで、キャンペーン期間を設定し、その間「新物!濃厚うに包み」、「とやま鮨(す)し人考案 新物うに 鮨し人流3種盛り」「豪華かにづくし」を提供する旨を宣伝していましたが、キャンペーン期間より遅れて商品を提供したり、キャンペーン期間始まってすぐに、用意していた商品は売り切れてしまったのに、それを隠して同じ広告を続けていたりしていました。

消費者庁は「「おとり広告に関する表示」等の運用基準」という名称で運用基準を発表しており、これに基づいて行政指導が行われています。

複数の店舗で販売する旨を申し出る場合については「単一の事業者が同一の広告、ビラ等においてその事業者の複数の店舗で販売する旨を申し出る場合においては、原則として、各店舗毎の販売数量が明記されている必要がある。広告スペース等の事情により、各店舗毎の販売数量を明記することが困難な場合には、当該広告、ビラ等に記載された全店舗での総販売数量に併せて、店舗により販売数量が異なる旨及び全店舗のうち最も販売数量が少ない店舗における販売数量の表示が必要である。」とされています。
一応スシローも「売り切れごめん」とは広告にうたっていましたが、それでは足りないと消費者庁は判断したようです。

公取委(管轄が以前は公取委であった)の平成5年4月28日付告示では、以下のものがおとり広告にあたるとしています。

【1】取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての表示
【2】取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示
【3】取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示
【4】取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務についての表示

なお、おとり広告を理由として行政指導が一番行われているのは、不動産業界です。もう成約済みの物件を、そのままウェブ広告に載せることがよく行われているため、公取委から、昭和55年4月12日付で「不動産のおとり広告に関する表示」との告示が、昭和55年6月9日付で「「不動産のおとり広告に関する表示」等の運用基準」との通達がなされています。

2022年06月16日
法律事務所ホームワン