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社会保険労務士様対象セミナー パワハラ防止法施行で企業に求められる対処法
社会保険労務士向けに、パワハラ防止法の実務対応のポイントについて、裁判例を紹介しながら解説いたしました。
- 開催日時:2020年2月12日(水)16:00~18:00
- 会場:法律事務所ホームワン会議室
- セミナー名:社会保険労務士様向けセミナー「パワハラ防止法施行で企業に求められる対処法」
- 講師:代表弁護士 山田冬樹
セミナー内容
- はじめに
- パワハラ防止の意義
- パワハラの3要件
- パワハラの6類型
- パワハラ防止・対処措置
- うつ病判断基準
- 士業向けサポートプランのご案内
担当弁護士より
今年の6月(中小企業は令和4年4月)からいわゆるパワハラ防止法が施行されます。法律で定められているのは、6類型ではなく、3要件です。
- 職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、
- 業務の適正な範囲を超えて、
- 精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為
以上の3つの要件全てを充足した場合、パワハラとなります。
この要件の当てはめで一番難しいのは(2)でしょう。パワハラの多くが、外形的には、指導、業務上の命令として行われるからです。そのため「業務上明らかに必要性のない言動」「業務の目的を大きく逸脱した言動」「業務を遂行するための手段としての不適切な言動」「当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動」は全て「業務の適正な範囲を超える行為」とされます。
ただ、個々の言動が、上記の要件に該当するかどうかを判断するのは困難です。この困難さを多少でも救うために、6類型というツールがあるのです。
6類型には、(ア)身体的な攻撃(暴力等)、(イ)精神的な攻撃(暴言等)、(ウ)人間関係からの切り離し(仲間はずれ等)、(エ)過大な要求(達成不能な仕事等)、(オ)過小な要求(能力に見合わない仕事等)、(カ)個の侵害(プライバシーへの干渉等)があります。
(ア)の身体的な攻撃は(1)~(3)の要件を当然満たします。
(ウ)の人間関係からの引き離しが行われれば、(1)~(3)の要件は満たすでしょうが、はたして「人間関係からの引き離し」と言えるような状況があったのかどうか、事実認定が困難な場合が多いでしょう。
(エ)の過大な要求、(オ)の過小な要求は通常、配転命令等を通じて行われることが多く、こうした命令は企業の自由裁量が広く認められるため、(2)の要件を欠くことが多いでしょう。
(カ)の個の侵害は、業務上必要な私的情報かどうかが(2)の要件として、どの程度精神的負担になるかの点で(3)の要件が問題になります。
そして一番難しく、問題となるのが、(イ)の精神的攻撃でしょう。(3)の要件も問題になりますが、より難しいのは(2)の要件でしょう。裁判例も(イ)に関するものが多く、さらに㋑と長時間労働が合わさって労働者のメンタルを害している事案に関するものが多数存在します。「業務上明らかに必要性のない言動」「業務の目的を大きく逸脱した言動」「業務を遂行するための手段としての不適切な言動」「当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動」等の表現は、パワハラに関する裁判例に出てくる表現をそのまま取り上げたとも言えるのです。こういった点について弁護士の知識を生かしていただければ、と思います
パワハラ防止策として,トップからのメッセージや就業規則の整備,社内研修なども、我々弁護士にお任せください。ただ、より具体的な処方箋としては、管理職のコーチング技術の向上や,アンガーマネジメントこそが重要だと思います。こうした能力の不足がパワハラを呼んでいると思われるからです。