企業法務コラム

中国首相が人民元切り上げに否定的な考え

中国の温家宝首相は3月14日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の閉幕にあたって記者会見し、「人民元が過小評価されているとは思わない」と述べ、人民元の切り上げに否定的な考えを述べた。

人民元は、政府当局が厳しい通貨管理を行っており、実質ドルとの固定レート制になっている。中国経済の発展の度合いからすれば、人民元の対ドルレートが上がってしかるべきなのに、上がらないことに、米議会を中心に反発が強まっている。論者の中には、今の人民元の対ドル為替レートは40%ほど割安だという意見もある。

米国議会は中間選挙を控え、どうしても国内向けに、人民元の切り上げを言わざるを得ない立場にある。米国では、4月に大統領が、貿易相手国が為替操作国かどうかを認定しなければならないことになっているため、議論が熱を増している。もし為替操作国と認定されれば、報復関税も検討しなければならない。

オバマ大統領も、輸出の拡大を政策の重要課題に掲げており、そうであれば、人民元切り上げを図らなければならない。しかし、オバマ大統領としては米国債を中国に買ってもらわないと、国債の発行が難しくなるという台所事情もあって、穏便に済ませたい。オバマ大統領は、結局は中国を為替操作国と認定することはないだろう。

中国も、好景気に沸いているが、これも政府の積極的財政、金融緩和政策があっての話だ。中国政府は内需拡大を目指しているが、内需拡大には、社会制度改革もともなうため、時間がかかる。とすればしばらくは外需頼みとならざるを得ず、そうなれば人民元切り上げには応じられない。もっとも、中国内でも、輸出企業は人民元切り上げに反対だが、内需産業の中には人民元切り上げを求める声もある。中国は諸外国の圧力に応じることはないが、こうした国内要因で人民元切り上げに進むことはある。しかし、それは今年の後半だというのが、大方の予想ではないか。

※ 参照ニュース 3月15日 ロイター
中国首相が人民元切り上げ圧力に反発、米国非難も

2010年03月15日
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