企業法務コラム

国交省、住宅リフォームの消費者トラブルに指針。悪質業者排除に本腰

国土交通省は2012年度末までに、住宅リフォームにかかわる消費者トラブルに対応する相談窓口向けの指針を策定する。併せて相談員の教育プログラムを作成し、13年度からモデル事業を実施して専門家の育成支援に乗り出す。地方自治体が中心となっている消費者相談窓口で住宅リフォーム問題にきめ細かく対応できる体制を整え、中古住宅流通・リフォーム市場の拡大につなげていくのが目的だ。

※参考
2012年10月10日 日刊工業新聞
「国交省、住宅リフォームに消費者トラブル対応の指針-相談員育成を支援」
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0920121010caag.html

(評)
平成22年6月18日閣議決定された新成長戦略では、「ストック重視の住宅政策への転換」が挙げられている。「住宅を作っては壊す」社会から「良いものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」という観点の下、中古住宅流通市場やリフォーム市場を拡大しようという戦略である。2020年までに中古住宅流通・リフォーム市場の規模を20兆円まで倍増させるのが目標だ。
若年層が厚い時期であれば、新築住宅需要の拡大が見込めたが、今のようにシニア層が増えてくると、新築需要がそう伸びることはない。その代わり、今ある住宅をリフォームする需要が伸びてくるのでは、という皮算用から出発したのが、この政策である。近年、こうした行政の動きを見て、サービス付高齢者住宅(サ高住)、インスペクション、リフォーム瑕疵保険、住宅購入・リフォーム一体型ローン、不動産情報開示システム強化が不動産市場のキーワードになりつつあるので、興味ある方はそちらの方も勉強されたい。
しかし、リフォームという言葉に対する国民の印象は良くない。かつて埼玉県富士見市内の老女姉妹が悪質リフォーム業者に騙されて、不要なリフォームを繰り返し何千万円もの負債を負わされて新聞沙汰になったことは耳目に新しかろう。消費生活センターに寄せられる相談件数全体は減少しているものの、住宅リフォームに関する相談は増加傾向にあり、10年度で約80万件だった。政府もこうした悪質業者を淘汰しないと、政策目標が実現できないと見て、悪質業者の排除に本腰を入れ始めたということだ。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2012年10月11日
法律事務所ホームワン