企業法務コラム

厚労省、割増賃金不払いまとめ。合計額は約146億円

10月16日付で、厚労省が、全国の労働基準監督署が、平成23年4月から平成24年3月までの1年間の割増賃金不払を理由として是正指導した事案中、1企業で100万円以上の割増賃金が支

払われた事案の取りまとめ結果を発表した。発表内容は次の通り。
是正企業数         1,312企業(前年度比74企業の減)
支払われた割増賃金合計額  145億9,957万円(同22億7,599万円の増)
対象労働者数        11万7,002人(同1,771人の増)
支払われた割増賃金の平均額は1企業当たり1,113万円
労働者1人当たり 12万円
割増賃金を1,000万円以上支払ったのは117企業で全体の8.9%、その合計額は83億223
万円で全体の56.9%
1企業当たりの最高支払額は「26億8,844万円」(建設業)、次いで「9億8,207万
円」(金融業)、「7億5,687万円」(小売業)の順

※参考
2012年10月16日 厚生労働省ホームページ
「平成23年度に監督指導により支払われた割増賃金の合計額は、約146億円 -平成23年度 賃金不払残業(サービス残業)是正の結果まとめ- 」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002lrsc.html

(評)
平成13年4月に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」、平成15年5月に「賃金不払残業総合対策要綱」と「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」が策定されている。
割増賃金は過去2年間に遡って請求されるし、それが従業員全体に及んだ場合、大変な金額となるため、企業の存続自体を危うくしかねない。
特に注意すべきは、残業代を払わない代わりに給料を高めに設定している会社。例えば、毎月50時間分ほど残業している従業員に「その分給料を多めに支払うから」として月45万円支払っている会社があったとする。その従業員が労基署に訴え出た場合、45万円が丸々所定労働時間に対する給与として扱われ、45万円のほかに、50時間分の残業手当を払う必要が出てくる。それが2年分となると1200時間分だ。
訴訟していざ敗訴すると、労働基準法114条により、裁判上認められた割増賃金のほか、これと同額の付加金の支払が命ぜられることにもなる。例えば割増賃金が500万円だと、付加金も併せて1000万円も支払わされる。そのため、なるべく和解で解決した方が得策だ。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2012年10月19日
法律事務所ホームワン