企業法務コラム

「5%ルール」緩和へ。本店決済、行員のコンサルティング力等、課題も多く

金融庁は銀行による事業会社への出資比率規制を見直す方針を固めた。出資比率の上限を5%以下とした現行の「5%ルール」を改め、中小企業などに20%未満の出資を認める方向で検討する。

※参考
2012年10月30日 日刊工業新聞
「金融庁、出資規制見直し-銀行「5%ルール」緩和」
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx1220121030abay.html

(評)
10月10日、金融庁の金融審議会は金融システムの安定に関する作業部会を開き、5%ルールの緩和に向けた具体的議論を始めている。
日刊工業新聞のニュースサイトで、今日、この記事が出たのだが、具体的詳細は不明(WEB会員になっていないので)、単なる焼き直し記事ではないか。
銀行法16条の3は、銀行又はその子会社は、国内の会社の議決権については、合算して、総株主等の議決権の5%を超える議決権を取得し、又は保有してはならない、と規定している。銀行が本業以外の事業で経営の健全性を損なうことがないようにというのがその理由だ。
ただ、実際にはさまざまな例外(内閣府令で規定)も認められている。だから、今でも銀行はDES(貸付債務を株式に転換し、融資先の自己資本比率を高める措置)等を通じて融資先を支援している。しかし、5%ルールがあるため、無議決権株式を利用することが多い。
しかし、その後も経営改善が進まなければ、結局銀行が損を被ることになる。銀行としてはそうならないように、金も出すが口も出したい。しかし5%ルールが邪魔になって、口も出せず、結果DESについても及び腰になる。これを避けようというのが今回の5%ルール緩和の理由だ。
またこうして、銀行が経営支援をしても、株を持っていられるのは1年が原則となっているが、一度潰れかかっている会社が1年猶予されただけでは、再生がかなわない。銀行としても経営改善計画の履行状況を見極めるのに3~5年程度はかけたい。
ただ、銀行が口を出すといっても、ただ目標達成を言えば足りるものではない。実抜要件を守らせるのも重要だが、それ以上に重要なのはコンサルティング能力だ。財務分析を行い、弱点を見つけ、どこをどの程度改善すれば、再建できるのか。これを教えることのできる行員を育てなければならない。
5%ルール緩和はベンチャー企業向け融資の拡大も視野に入れている。しかし今の銀行で、企業融資について、支店決裁は削られ、本店決済が中心。現場の行員のコンサルティング力も落ちている。このような制度を作っても、このままでは仏作って魂入れずだ。
金融円滑化法が2013年3月で終了する。残された時間は少ない。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2012年10月30日
法律事務所ホームワン