企業法務コラム

JOC、50以上の競技対象に暴力・パワハラ調査へ

暴力やパワーハラスメントについてJOCが実施する実態調査が、五輪競技を含む50以上の競技を対象にすることが2日、分かった。セクハラについても調べる。
JOCには59団体が加盟、準加盟しており、関係者は「五輪競技に限定せず、徹底的に調べる」と述べた。質問項目を各団体の責任者に通達する形を取り、選手の範囲は「日本代表のトップクラスになる」とした。過去どのくらいさかのぼるかは未定という。JOCは柔道での問題で、文部科学省から他競技の調査も指示された。

※引用
2013年2月3日 スポニチ
「50以上の競技対象 JOCの暴力、セクハラ実態調査」
http://www.sponichi.co.jp/sports/news/2013/02/03/kiji/K20130203005115401.html

(評)
女子柔道におけるパワハラ(暴力)問題が、他競技にまで拡大しそうな雰囲気だ。
園田監督は、代表選手らを、竹刀で叩いたり、平手打ちをしたりしたというが、暴行罪という立派な犯罪だ。
園田監督のやったことも問題だが、全柔連、JOCの対応も最悪だった。12年9月に内部告発を受けて、全柔連が調査したが、園田監督が始末書を提出したため、お咎めなし。この処分に不満を持った選手15人が、12年12月JOCに連名で文書による告発・調査やり直しを求めた。にもかかわらず、JOCは全柔連に下駄を預けた。13年1月19日、全柔連が下した処分は戒告処分で、代表監督も続投となった。全柔連の処分に納得ができないから、JOC宛告発がなされたのに、JOCの無責任ぶりもはなはだしい。
講道館での園田監督の辞任会見もお粗末だった。「私の行動、言動が選手をはじめ多くの関係者にご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ありません」とのこと。「選手」との言葉が先には来ているが、すぐその後に「多くの関係者に」との言葉が続き、謝罪の相手として「選手」と「全柔連、JOC」が同列に置かれている。しかも、次に継いだ言葉が「ご迷惑をお掛けし」だ。選手に対しては謝罪あるのみで、「迷惑」で済む話ではない。要するに園田監督は、全柔連、JOCへ「迷惑」をかけたことで頭がいっぱいで、この発言につながったのだろう。
この点は、園田監督自身の問題を超えて全柔連への責任に行き着く。子どもが後輩に暴力をふるって、子どもが親に連れられて、後輩のうちに謝りに行った。そのときに、「●君だけでなく、うちの親にも迷惑をかけた」などと言ったら、「親の教育はどうなっているの?」と言われるだろう。
JOCが、各団体にアンケート調査をとるのは当然だが、その調査の結果、同じようなことが起これば火に油を注ぐ。もし、アンケートを送られた各団体も、東京五輪開催にマイナスになるから、暴力があっても、なかったことにしよう、ということになったら、それこそ大問題だ。マスコミは日ごろの指導者の言動を見ている。にもかかわらず、白々しく「暴力はありませんでした」などと回答したらマスコミの袋叩きにあう。マスコミは、日ごろは攻撃材料をプールするだけで、黙っているが、いざ話題になると、視聴率をとるために、一気に叩きに来る。このことはよく覚悟した方が良い。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年02月05日
法律事務所ホームワン