企業法務コラム

安倍首相、TPP交渉参加を表明 国際水準の中で「聖域」はどうなるか?

安倍晋三首相は15日夕、首相官邸で記者会見し、TPP交渉に参加する決断をした、と正式に表明した。「あらゆる努力で日本の農を守り、食を守ることを誓う」と訴え、参加への理解を求めた。
日本の参加は、米議会の承認手続きに90日程度かかることに加え、先行参加国が7月の交渉会合開催を検討していることから、早くても7月以降になる見通し。

※参照
時事ドットコム
安倍首相、TPP交渉参加を表明=「経済全体にプラス」-農業の競争力強化に全力
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013031500795

(評)
TPP交渉への参加は決まった。これからは、TPPに何を求めるかが重要となってくる。
今まで日本が各国と締結しているEPA、FTAは自由化のレベル化が極めて低い。例えばインドとのEPAでは、関税が廃止されるのは90%に過ぎない。日本は、コメ、小麦、牛肉、乳製品、砂糖の5分野を「聖域」と呼び、これらの品目だけで10%に達する。日本が5分野を聖域とする限りは、関税撤廃品目はどうしても90%程度にしかならない。
仮に、90%レベルでTPPが締結されたとしても、こちらの聖域を認めてもらうためには、相手の聖域も認める必要があり、デメリットもないが、メリットもない代物になってしまう。
どの国もそんな内容のないTPPには納得しないだろうし、まず米国が納得しない。米国は自国が締結した二国間協定でも関税撤廃品目は96-99%に達しており、これを下回る水準は全く考えていない。
さらに米国は、TPPを国際水準とすることで、中国に不当貿易慣行の撤廃を求める構えでおり、対中国経済包囲網を意味する。いわば経済安全保障的な意義を有しているため、安易な妥協はしないはずだ。
日本が最後まで聖域を主張するなら、同盟国の資格なしとさえ言われかねない。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年03月19日
法律事務所ホームワン