企業法務コラム

日銀総裁・副総裁、就任会見 国債買入れなどの方向性示す

黒田東彦総裁と岩田規久男、中曽宏両副総裁の就任記者会見が21日、日銀本店で行われた。一問一答は次の通り。

――就任の抱負は
 黒田氏「日本経済は過去15年、デフレに苦しんできた。2%の物価目標の早期達成が日銀の最大の使命。海外に政策をクリアに説明し、日銀の全国の支店を活用して、全身全霊で努力する」

――物価上昇率目標をどう達成する
 黒田氏「できることは何でもやるし、達成できると確信している。円高、新興国からの安い物資の流入など、あらゆる要素が物価に影響するが、物価安定を確保する責務はどこの国でも中央銀行にある」
 岩田氏「2年で物価上昇率2%を達成するとコミットメントすることが必要。言い訳をしない立場に立たないと、市場は日銀の金融政策を信用しない」
 中曽氏「日銀は多くの政策を実行したが、デフレを克服できず、政策全体の枠組みや狙いがわかりにくくなった。前例にとらわれない政策を実行したい」

――金融緩和は実体経済にどう波及するか
 黒田氏「金利が下がれば、銀行融資に頼る中小企業の資金需要に応えやすくなる。大企業も、金融緩和で債券や株式市場に資金が流入すれば、企業の経済活動を刺激する」
 岩田氏「デフレの特色はマネーが動かないことだ。今のようにインフレ予想が上がると、最初は株価が上昇し、その後、企業が内部留保を取り崩したり、増資で設備投資をするようになる。凍り付いていたお金を動かし、支出に促すのが金融政策の役割だ」

――物価上昇目標が達成できなかったときの責任は
 黒田氏「私は現行の日銀法の下で仕事しており、日銀法改正は政府、国会が最終的に決めること。私から言うことはない」
 岩田氏「まず果たすべきは説明責任。説明責任が果たせず、(目標の未達が)私のミスジャッジだったのであれば、最高の責任の取り方は辞任だ。日銀法改正は、長期的にはどんな人が総裁など政策委員になっても物価目標を法的に担保することが必要だ」

※参照
2013年3月22日 msn産経ニュース
日銀総裁・副総裁 一問一答 「2%に全身全霊」
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130322/fnc13032209310008-n1.htm

(評)
日銀はどう変わるのか。黒田総裁のこれまでの発言からすると、次のような方向が見えてくる。
1 国債等を期限を切らずに毎月一定量買い入れる無期限緩和 2014年スタートを前倒し
2 ETF、REIT等のリスク資産購入 購入額を増額
3 買い入れ対象の国債 3年物より長期の国債も対象に
4 銀行券ルール 撤廃の可能性(資産買い入れ基金により有名無実化しているが)
5 2001年3月から2006年3月まで行っていた量的緩和政策を再開
他方、外債購入には踏み切らないだろう。先般のG20でも、日本の金融緩和は円安を目的としたものではないと弁解し、火消しに努めたのに、その努力がふいになる。
また、国債の直接引き受けも行われないだろう。財政法第5条にも「公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせてはならない」と規定されている。マネタイゼーションは、悪性インフレ、悪い長期金利上昇を招きかねない。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年03月25日
法律事務所ホームワン