企業法務コラム

国交省のエレベーター保守新標準約款で エレベーターの寿命は20年に

国交省住宅局建築指導課は、4月15日付で、「昇降機(エレベーターのこと)の適切な維持管理に関する指針」(案)を発表した。
同指針案では、「エレベーター保守・点検業務標準契約書(案)」が定められ、今後の標準的維持管理が、業界主導で決められようとしている。

※参照
2013年4月15日 国土交通省ホームページ 報道発表資料
「昇降機の適切な維持管理に関する指針」(案)に対する意見募集について
http://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000304.html

(評)
エレベータの保守契約には、POG契約(「パーツ・オイル・グリス契約」の略称)と、フルメンテナンス契約(FM契約)とがある。
POG契約は、各部の点検、注油、調整及び消耗部品(おおむね、3ケ月~6ケ月毎に取り替えの必要な部品)の取替えに業務範囲が限られるが、FM契約になると、比較的費用のかかるロープ交換等も無償で受けてもらえる。しかし、当然後者の方が料金は高くなる。エレベーター一基当たりの月額費用は、前者が2万円程度とすると、後者は4万円ほどになる。
国交省の定めて標準契約で注目されるのは、20条2項。同条項は、FM契約の場合、「自動更新の上限を本エレベーターの検査済証の交付日から起算して20年に達するまでとし、以降は、委託者及受託者の新たな合意により更新するものとする。」としている。
これはエレベーターの2012年問題とも絡む重要な規程だ。
ここ数年、エレベーター製造メーカーが、製造中止からおおむね25年以上経過した機種について「保守部品の供給を停止する」と相次ぎ発表している。供給を止めるとした期限は2012(平成24)年が多く、そのため「2012年問題」と言われている。
保守部品の供給が止まると、故障すればエレベーターは使えなくなる。各メーカーや系列保守会社は、供給停止を機に、エレベーターをリニューアルするよう、顧客であるビルのオーナーやマンション管理組合などに呼びかけている。
更に、「顧客側が部品切れ後も使用を続ける場合、保守契約を打ち切る」という方針を打ち出した企業もあった。
今回の指針はこうしたエレベーター業者の意見を反映したものになっている。

キーワード: マンション エレベーター 2012年問題

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年04月17日
法律事務所ホームワン