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厚労省、医療国際展開戦略室を設置
厚労省は5月10日、医政局総務課に、医政局長の伺い定め室として「医療国際展開戦略室」を設置した。
同室では、内閣総理大臣(平成25年4月2日第6回日本経済再生本部)からの、「内閣官房長官は関係閣僚を束ね、日本の医療技術・サービスを国際展開するため、新たに創設される組織母体が中核となって行われる医療機関、関連企業等による国際事業展開活動を、経済協力をはじめ、あらゆる手段を動員して支援すること。」との御指示を踏まえ、今後、関係機関・関係省庁との連携を図りながら、医療の国際展開に関する具体的な取組を検討・実施します。
※参照
厚生労働省ホームページ
医療国際展開戦略室の設置について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000003125v.html
(評)
「伺い定め室」とはお役所用語の一つ。「課や部の中で、通常こんな形で進めたいということで決裁を取る」ことを「伺う」と言い、決裁で方針を定めているということを伺い定めと言う。要するに「一々決裁するのは面倒だから、この方針でやってよ、後は任せたよ」ということで、プロジェクトチームを作ったということ。
厚生労働省設置令33条によれば、医政局総務課の所掌事務に「保健医療に関する基本的な政策の企画及び立案並びに推進に関すること」がある。こういった医療の国際展開のための「政策を企画および立案」するレベルであれば、総務局の所掌事務として行うことができる。そのため、法令の根拠は不要だ。
ところで、医療の国際展開ということだが、医療を産業と位置付け、アウトバウンドを指向して行こうということだろう。現在経産省が世界から患者の呼び込みという「インバウンド」政策(医療国際化政策)を進めており(http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004627/000_01_02.pdf)、これに対抗してのものであろうか。
歴代政権が、日医の圧力で、医学部の新設を抑制してきた反動で、今後高齢化が進む中で医師不足が深刻化することは明らか。海外に手を出している余裕はあるのだろうか。
さらに一言。EPAを利用して、フィリピン等から看護師希望者を受け入れているものの、結果10%しか合格させず、人的資源の無駄遣いを招いているが、インバウンドで利用してはどうか。海外から医師を受け入れるのも一策だろう。そうした観点からすれば、経産省のインバウンド政策の方に軍配を上げたい。
さらにもう一言。厚労省は、4月2日の日本経済再生本部会合で、総理大臣からこうした取り組みを指示されたというが、同日の議事の中心は「待機児童の早期解消、雇用調整助成金から労働移動支援助成金へのシフトチェンジ、石炭火力発電所の活用、日本版NIHの創設」の4点。医療の国際展開なんて、同本部発表の議事概要には全くでていないのだが。
キーワード:医療の国際展開 医療国際
法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹
2013年05月17日
法律事務所ホームワン