企業法務コラム

金融円滑化法失効の先にあるもの

金融円滑化法は平成21年12月4日に施行され、平成25年3月末に失効した。中小企業や住宅ローンの借り手から借金の負担軽減を求められた場合、金融機関に金利を減免したり、返済期限を延ばしたりするよう求めた法律だ。金融機関は返済猶予の実施状況の報告が義務づけられているが、金融庁は、報告をもとに、3年4ヶ月にわたる同法の施行状況をとりまとめ、6月7日発表した。
中小企業からの貸付条件の変更申請は4,312,203件(118兆9193億)に及び、4,019,733件(111兆7424億円)が実行されたという。

(評)
金融機関の報告は、条件変更を何件受け付け、何件に応じたかである。何社かではない。1社で数口の融資について条件変更を受けると、それは数件とカウントされる。
また一口の借入について2回リスケを受けると2件とカウントされる。そのため件数は分かっても、何社が条件変更を受けているかは分からない。ただ、金融庁は30万~40万社と推定している。日本の全中小企業は約420万社だから、7~10%が利用していることになる。
利用企業の約8割は過去に利用経験がある「リピーター」とみられる。こうしたリピーター企業の何割かは、円滑化がなければつぶれていた可能性が高い。
昨年11月には当時の中塚一宏金融担当相が、期限切れ後も返済猶予に柔軟に対応するよう金融機関に要請し、金融機関が要請に応じているかどうかを検査・監督する考えを示している。
しかし、実際それと逆の動きもあるようだ。あるコンサルの話だが、都内城南地区の大手信金は、経営改善計画を上回るペースで業績回復している企業に対しても、今後条件変更する際は、返済額を増やすか、利率を上げるかどちらかにしろと迫ってきたという。
下記MSN産経ニュースには、「内装業者は金融機関の財務状況調査をクリアしたが、一部の融資先企業は“正常先の証し”として、月々の返済額の上積みを求められているという。」との記事もあり、正常先ですら安心できないのに、要管理先はどうなるのだろうか。
しかし愚痴を言っても仕方ない。今条件変更中の企業は、経営改善に向け最大限の努力をし、金融機関への報告もこまめにし、経営改善の実績を少しでも積み上げていくほかない。

※参考
2013年3月28日 MSN産経ニュース
【中小企業金融円滑化法終了】(上)さっそく厳しい態度に出た金融機関「経常正常なら返済額積み増せ」
http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/130328/wec13032807000000-n1.htm

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年06月10日
法律事務所ホームワン