企業法務コラム

株式会社海外需要開拓支援機構法(クール・ジャパン法)が成立・交付

経産省の7月8日付報道発表によると、「株式会社海外需要開拓支援機構法」が平成 25年 6月 12日に可決・成立し、同月 19 日に公布された。
同社は経産相の認可により設立され、政府が、常時機構の株式総数1/2以上を保有する半官半民の株式会社。我が国の生活文化特色を生かした魅力ある商品・サービス海外における需要の開拓を行う事業活動等に対し出資等を行い、専門家派遣・助言指導を行うという。

※参照
経済産業省ニュースリリース 平成25年7月8日
株式会社海外需要開拓支援機構法(クール・ジャパン法)が成立・交付されました
http://www.meti.go.jp/press/2013/07/20130708003/20130708003.pdf

(評)
クールジャパン戦略は、民主党政権下で成長戦略の一環として唱えられた。ファッション、コンテンツ、観光の分野で11 兆円、食の分野で6兆円、合計17 兆円の市場を作ろうと目指すというもので、安倍政権下でも継承され、12年12月発足の安倍内閣では、稲田朋美氏が「クールジャパン戦略担当大臣に任命され、13年3月からは「クールジャパン推進会議」がスタートしている。
韓国においては、1998 年の金大中大統領による「文化大統領宣言」以降コンテンツ関係予算が大幅に拡大され、09年李明博政権下で「コンテンツ振興院」が設立され、コンテンツ、ファッション、消費財をパッケージで売り込むことで、例えばコンテンツ産業の市場規模は年数%規模で拡大している。
ただ、政府が助成金を出せば、それでクールジャパンが進展する訳ではない。馬を川まで連れて行っても馬が水を飲まなければ話にならない。問題は馬が水を飲むかということである。韓流ブームの火付け役は、韓流ドラマであるが、国内ドラマ特に民放のドラマが海外進出するとは考えにくい。日本のテレビドラマ日本のテレビ局は、国内の市場だけを見て作っているのを、世界中に受けるものにしろ、と言っても応じないだろう。また著作権の問題がある。テレビ局がドラマをコンテンツで売り出そうとすれば、そのドラマに関わる俳優、ナレーター、楽曲提供者等全ての著作権者から、ドラマをコンテンツとして海外局に販売することに承諾するという一筆をとる必要がある。ただ、全ての著作権者が応じる訳ではない。例えばJ事務所がこれに応じるかという問題に直面し、でも国内のスポンサーの要請もあるから是が非でもJ事務所の所属タレントを使わざるを得ないといったような事情が往々にしてあるからだ。
この海外需要開拓支援機構なる組織も、経産省としては、政策効果が上がる上がらないは関係ない。予算付けができ、天下り役人を送り込めればそれで一丁あがりである。稲田大臣には、天下りを一人も許さない覚悟でやってもらいたい。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年07月09日
法律事務所ホームワン