企業法務コラム

三菱東京UFJ銀 優良中小に低利融資

三菱東京UFJ銀行は、中小企業向けに円滑な資金供給を行うため、TKC全国会との連携で、信用保証協会の制度を活用した新たな融資を、10月から開始する。経営革新等支援機関に認定されているTKC全国会の会員税理士の月次巡回監査を受け、中期経営計画を策定していることが条件。融資枠1000億円、1社当たりの貸出額を1000万~3000万円に抑え、約5000社に貸し出す計画。
会計管理上以下の3つの条件を設けて、一つ満たすごとに金利を0.3%優遇するため、最優遇金利は5年固定で年0.5%程度と優良な大企業並みの低い水準とする。

1 中小会計要領を会計ルールとして採用していること
2 申告書の適正性を表明する税理士書面が添付されていること
3 TKCが発行する「記帳適時性証明書」において、月次決算・年次決算の「◎」が合計30個以上あること

※参照
2013年8月5日 日本経済新聞朝刊
「三菱UFJ銀、優良中小に低利融資 計1000億円、10月から」

三菱東京UFJ銀行ホームページ
TKC全国会との連携による経営革新等支援機関の枠組みを活用した中小企業支援について

(評)
TKC全国会は税理士および公認会計士の組織で、経営計画策定支援、月次巡回監査をベースにしたタイムリーな業績管理体制構築の支援、信頼性の高い決算に基いた適正申告の実現をうたい文句にしている。税理士も顧問先がTKCのソフトを使っていたりするため、必然的に年50万円くらいの会費(実質はソフト利用料)を支払って会員になっていることが多い。
経営革新等支援機関認定制度は、中小企業支援事業の担い手の多様化・活性化を図るため、税務、金融および企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が豊富な個人、法人、中小企業支援機関等を認定する制度(当事務所も認定を受けています)。
中小企業の多くが、税理士には記帳代行と確定申告を任せるだけ。そのため税理士も細かいチェックができず、企業が粉飾しようと思えば、結構簡単にできてしまう。銀行が中小企業にプロパーで(信用保証協会保証をなしに)貸し付けることをしないのも、中小企業向け金利が高いのも、この点が大きな原因となっている。
中小企業庁は、こういった中小企業会計の不透明さをなくすべく、「中小企業の会計に関する基本要領」、「中小企業の会計に関する指針」を定め、中小企業にこれにそった会計処理をするよう促している。
日本政策金融公庫は、「中小企業の会計に関する基本要領」と「中小企業の会計に関する指針」のどちらかを採用し、かつ、財務改善のための経営計画書を作成することを融資条件とする「中小企業会計活用強化資金」という特別枠の融資制度を設けている。また、信用保証協会も、平成25年4月から3年間、「中小会計要領」を会計ルールとして採用する中小企業の信用保証料率を0.1%割り引くことにしている。
東京三菱UFJの新融資制度はこうした流れに沿ったものといえる。
詳細は分からないが、おそらくは融資条件ないしコベナンツ条項付で、融資後も上記のような融資条件を継続して遵守することが要求されているのではないか。
因みに、最近ABL(商品等の流動動産、売掛金等の流動債権を担保とするローン)が話題になっているが、これは担保機能というより、商品債権の動きをモニタリングすることによって企業会計を生の形で把握する代わりに融資を実行していこうというリレバン(リレーションシップ・バンキング)的な発想によるものだということを理解いただきたい。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年08月12日
法律事務所ホームワン