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都心部での急速な高齢化に対する処方箋
厚労省の「都市部の高齢化対策に関する検討会」が9月20日、報告書案をまとめた。今後予想される都市部での急速な高齢化に対処するための処方箋をまとめるのが、この検討会の役目である。報告書では、在宅介護を推進すべく、地域包括ケアシステムの整備や、高齢者向け住居の整備等が提言されている。
(評)
現在では、地方都市の高齢化人口比率の高さが問題になっているが、今後は、都市部の高齢化が大きな問題になる。
2010 年から2025 年までの15 年間で、75 歳以上高齢者増加数のトップ6は、東京、神奈川、大阪、埼玉県、千葉、愛知と大都市圏が占めている。理由は団塊の世代が大都市に集中しており、今後この団塊の世代が一挙に高齢化するからだ。増加数が一番多いのは東京都で、2010 年123.4 万人から2025 年197.7 万人へ74.3 万人増加する。増加率が一番高いのは埼玉県で2010 年58.9 万人から2025 年117.7 万人へ倍増する。
高齢者が都心のA区から、多摩地区のB市のサービス付高齢者向け住宅(サ高住)に移った場合、当該サ高住が特定施設入居者生活介護指定を受けるなど、有料老人ホーム並のサービスが提供していれば、A区が引き続き保険者となる(住宅地特例)。しかし、そうでない通常のサ高住の場合、移った先のB市が保険者となる。都市部は地価が高いため、郊外のサ高住が増えてくるであろうが、そうなると今後、郊外の市区町村の介護保険財政の負担が増す一方になる。そのため、サ高住全てについて、住宅地特例を適用し、先の例でいえばA区が引き続き保険者となるとすべきだとの提言がなされている。
現状、特別養護老人ホーム(特養)は、各区域ごとに設置しなければならないとされているが、区域外に設置することも認めるべきだとの提言もなされている。そうなれば、地価の高い都心部を離れて多摩地区での特養の建設も今後進んで行くであろう。
まさサ高住はどうしても家賃が高額になりやすいが、低所得者向けに空き家を改装した、低家賃の「高齢者ハウス」も整備して行こうという提言もなされている。ただ、高齢者を単身で住まわせると、孤独死する可能性もあり、そうなった場合遺品の整理に多額の金がかかりかねない。家賃が高ければそういったリスクも吸収できるが、家賃が低いとそういったリスクがカバーできず、低家賃の高齢者ハウスは普及しない可能性がある。以前江戸川区では生活保護を受けている単身者が孤独死した場合、その清掃費用は区が負担するという制度をとっていたが、予算が続かず平成24年度でこの制度は廃止されてしまっている。国がこうした事業を引き継ぎ、高齢者ハウスの供給を増やしていくことを検討しても良いのではないか。
本件とは話がずれるが、都市部の高齢化が進めば、都心部の医療が崩壊する可能性がある。本来は医師を増やすべきなのだが、日本医師会が医者が食えなくなると言って、いまだに医師増員に反対している。そのため昭和54年の琉球大学医学部創設を最後に、34年間も医学部が新設されない事態となっている。厚労省は、医師会の暴論にひるむことなく、医学部新設を進めないと大変なことになる(もう手遅れと言って良いが)。
注)地域包括ケアシステム
高齢者に、医療、介護予防、介護、住まい、生活支援サービスといった高齢者向けサービスを、分断して提供するのではなく全てを一体として考え、高齢者の健康状態、要介護状況に合わせて切れ目のない支援をしていこうというも。日常生活の中でこれらのサービスを適切に提供できるよう、30分以内で駆けつけられるレベルでのサービスの提供を想定している。
法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹
2013年09月25日
法律事務所ホームワン