企業法務コラム

自民党税調 法人税減税の代わりに外形標準課税拡大へ

5月27日付日経朝刊は、自民党税制調査会が26日の非公式幹部会合で、法人実効税率の引き下げに必要な財源について、事業規模に応じて赤字企業も税金を負担する外形標準課税を軸に検討に入ることで一致した、と報じた。6月上旬にもまとめる法人減税に関する基本的な考え方に盛り込む方針だ、という。

※参照
2014年5月27日 日本経済新聞 朝刊
「外形標準課税を検討 自民税調、法人減税の代替財源」

(評)
麻生財務相も27日の閣議後会見で法人税減税に伴う代替財源について、「外形標準課税もひとつの考え方」と述べており、党税調、政府税調も意見が一致したようだ。具体的に外形標準課税をどう拡大して行くのか、今後議論が進むことになる。
外形標準課税は、平成16年4月1日から実施されており、資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人が対象。同制度は、所得に係る法人事業税率が9.6%から7.2%に引き下げられたことに対応して導入された経緯があり、今回も同様、法人税減税とリンクしている。
ただ、肝心の議論が抜け落ちている。租税特別措置法についての議論だ。租税特別措置は、法人税や所得税などに様々な例外を作って、減税措置を定めている。その規模が年々拡大、複雑化している。自民党内では、税制改正の都度、業界・担当官庁・族議員が一体となって減税措置要求を繰り広げることが年中行事になっている。特措法をゼロベースで再検討すべきだろう。その前提として特措法の利用実態を公開して、議論を広く起こす必要がある。2010年3月に、租税特別措置透明化法が成立(民主党が発案し政権交代後に成立)。同法は企業がどの租税特別措置をどれだけ利用しているのか、全数調査して明らかにしようというものだが、利用実績上位企業の公表案は、与野党から反対する声が出て、法案から削除されてしまった。
因みに経団連の米倉会長が会長職を務める住友化学は16.6%しか税金を払っていない。これはナフサ租特が原因だ。こういった利権の本丸に切り込まないまま、法人税減税が議論されるのはおかしいだろう。楽天の三木谷会長が新経連を作ったのも、こうした重厚長大企業に偏った産業支援策に不満を持ってのことだろう。因みにホームワンは特措法の恩恵がないので、満額払わされています。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年05月27日
法律事務所ホームワン