企業法務コラム

リフォーム後 資産価値向上を保証するための仕組みは可能か

経産省はリフォーム後の一戸建てや集合住宅の資産価値を評価する新基準を導入する。築年数が経っても省エネ性能や耐震性が上がれば、資産価値に反映できるようにする。今夏に新たな基準を使った売買や融資の実証事業をする。
実証事業は関東近郊で、不動産事業者や、不動産鑑定士、銀行の参加を募って行われる。

※参照
2014年5月30日 日本経済新聞 朝刊
「リフォーム後の資産価値、省エネや耐震性反映 新基準、ローン後押し」

(評)
実証事業では、実際に評価基準を作り、その基準にそって銀行が担保価値を測り提携ローンを設計、事業者がリフォームした住宅を消費者に実際に販売する。事業者に利潤が出るか=事業化が可能か、消費者のニーズはどうか、そういったことを実証するのだという。
現状は、どうなっているか。中古建物は、同じ建物を新築するのにいくらかかるかを算出、そうした建築費を耐用年数に応じて減価償却して現在価値を算定する仕組みになっている。だから25年もたてば、ゼロ円としてしか評価して貰えない。これは日本では常識だが、欧米では非常識だ。欧米では不動産は磨き上げるもの。建物の価値を高めるため、建物を非常に大事にし、リフォームも怠らない。中には新築以上の金額のつく中古建物もある。欧州では、20世紀初めに作られたアールデコ調の建物には骨董的な価値がつく。これは極端としても、日本のように25年経ってらゼロ円なんていうことはない。
こうした取り組みは、一つには成長政策の一環として捉えられている。今後、世代は高齢化し、新築建物への需要は低くなり、現住家屋のリフォーム需要が高くなるような政策的努力がないと、建築業界は衰退する一方になる。もう一つは国民経済的観点だ。国民が一生懸命お金をつぎ込んで家を作っても、それが数十年でゼロになるとなれば、国民資本の形成が進まない。
ただ、そのためにはリフォーム業界が、真摯に顧客目線で、価格的にも、質的にも、顧客の納得できる改築を提供できるかが重要だ。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年06月02日
法律事務所ホームワン