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自動車業界全14社 汎用部品の仕様を統一
トヨタや日産、ホンダなど乗用車8社と日野自動車などトラック4社、二輪車のヤマハ、川崎重工業が「国際標準検討会」を設立した。車体などに使われる鋼板や鋼材、樹脂素材、自動車を制御する半導体等が仕様統一の候補になるもよう。2020年の実現を目指す自動運転技術に必要な無線通信の規格策定なども検討する。
※参照
2014年6月5日 日本経済新聞 朝刊
「クルマ全14社、部品の仕様統一 欧州勢に対抗」
(評)
フォルクスワーゲン(VW)やダイムラー、大手部品のボッシュなどドイツ勢は、一丸となって部品や技術の仕様を標準化、部品の開発や生産コスト削減に取り組んでいる。日本もそれにならおうというものだ。日経は、「同じ仕様や材料で生産出来るようになり、部品メーカーも規模のメリットを享受できる」一方で、「似通った品質の部品が増えるため、価格競争が激化し部品業界の淘汰・再編が加速する可能性もある。」とする。
しかし、変化はそれにとどまらないだろう。
これまで、日本の製造業の強みは、「擦り合わせ」にあるとされた。完成品メーカーと部品メーカーが互いに意見を出し合って、部材、工程、形状を手直しし、最適な部品を作り上げていく。これは「系列」という日本の製造業の縦割の仕組みの長所をいかしたものでもある。
これの対極にあるのが「組み合わせ」だ、完成メーカーが部品の仕様を特定し、各部品メーカーに仕様に沿った商品を作らせ、価格で競わせる。この組み合わせ技術をさらに推し進めたのがモジュール化で、IBMの取り組みが有名だ。以前はIBMは多くの部品を内製化していた。しかし、他のライバル企業からの追い上げに遭い、部品の製作をアウトソーシングしてコストを下げることが急務となった。IBMは、単純に部品を他社から買ってきて、組み立てるのではない。モジュールという部品の固まりの仕様を決め、そのモジュールを外部の企業に発注し、IBMはこうして他社が作った二ジュールを組み合わせてパソコンを作るのである。
しかし、IBMには一つの誤算があった。モジュールを組みわせるだけで、パソコンを作れるため、パソコンメーカーが単なるセットメーカーになってしまったことだ。このため、部品メーカーから安いモジュールを買い上げ、安い労賃でそれを組み立てる、新興企業が価格競争で優位に立つことになり、結果IBMのパソコン事業はさらに収益を悪化させ、最終的には中国企業のレノボにパソコン事業を売り渡すことになった。
パソコンに比べて、自動車を、エンジン、サスペンション、シャシー、ボディなどの各モジュールごとに切り離し、これを単に組み立てるだけでは、良い車は作れない。
自動車メーカーと部品メーカーが、互いの意見を出し合って、調整していかないと、良い車は作れない。これが常識だった。
しかし、VWはその常識を覆してしまったのである。VWはモジュール化を5年間かけて開発している。エンジンを例にとれば、吸気モジュール、排気モジュール、過給器の組み合わせによって作られることになる。そして、自動車全体がモジュールの組み合わせによって作られることで、コストの低減、開発期間の短縮、生産時間の短縮なども可能になる。
モジュール化の行きつく先は、規模の大きい部品メーカーが巨大化し、全ての部品メーカーはこの巨大部品メーカーの下で系列化されることになる。部品メーカーは、壮烈な規模の追求と、コスト競争に駆り立てらえれる。部品メーカーは規模の拡大を実現するため、国内競合社だけでなく、海外競合社にも取引を進めて行くことになるだろう。
そうして、自動車産業から擦り合わせ作業がどんどん減っていき、自動車業界への参入障壁は低くなって行くことになるだろう。
法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹
2014年06月06日
法律事務所ホームワン