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傭車契約における運転手の労働者性についての高裁判決
トラックの持ち込み運転手が会社に対し、社会保険の会社負担分も給与から控除されていたこと、標準報酬月額を低く申告していたため年金給付額が減少したことを理由として、に債務不履行または不法行為に基づく損害賠償を求める等した訴訟を提起し、会社側は、請負契約であり、労働者とは言えないとして請求に理由がないと争った事案で、名古屋高裁は平成26年5月29日付で、同運転手の労働者性を認め、原告の請求を一部認容する判決を言い渡した。
(評)
裁判所は、車持込み運転手が、他の従業員と異なって、就業規則及び給与規定が適用されず、出勤時間の定めがなく、報酬が完全出来高制であり、支給金額の最低保障もなく、昇給及び昇進もなく、有給休暇、定年、退職金もなかったことから、労働契約ではなく、会社のために、継続的かつ専属的に、木材等の配送業務を請け負う旨の契約(傭車契約)を締結し、同契約に従って、同業務に従事していたものと認めるのが相当であるとした。
そのうえで、「労働者性」の判断に当たっては、雇用契約、請負契約といった契約形式のいかんにかかわらず、実質的な使用従属性の有無を、労務提供の形態や報酬の労務対償性及びこれらに関連する諸要素をも勘案して総合的に判断すべきであり、その判断に当たっては、同法10条の「使用者」の定義規定及び同法11条の「賃金」の定義規定に鑑み、①使用者の指揮監督下において労務の提供を行う者といえること(使用従属性)と、②労務に対する対償を支払われる者であるこという二つの要件を満たすことが必要であり、上記①の「指揮監督下の労働」の要件については、a具体的仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無、b業務遂行上の指揮監督の有無、c勤務時場所及び勤務時間が指定され、管理されているかどうか(拘束性)の有無、さらに、d本人に代わってほかの者が労務を提供することが認められているかどうか(代替性)を考慮して、判断されるべきものであり、さらに、必要に応じて、上記①、②のほか、事業者性の有無や、専従性の有無なども考慮すべきであるとした。そして諸事実を認定の上労働者性を認める判決をしたものである。
傭車契約に関する従来の下級審裁判例として、金沢地裁昭和62年11月27日判決、東京地裁平成15年6月9日判決があるが、高裁判決は初めてのため紹介する。
労働基準法研究会が昭和60年12月19日に公表した最終報告の1つである「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(労判465号70頁以下)も参照されたい。
法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹
2014年08月25日
法律事務所ホームワン