企業法務コラム

3Dプリンター、米が先行

9月2日付日本経済新聞によると、グーグルと3Dプリンター大手の3Dシステムズは、顧客の好みに合わせた携帯電話をつくる3Dプリンターを開発した、とのこと。「複数の3Dプリンターで流れ作業のように部品をつくることで、従来の50倍の速度で量産できる。」という。

※参照
2014年9月2日 日本経済新聞 夕刊 
「グーグルなど、3Dプリンターで生産 オーダーメード携帯・宇宙船部品・住宅… 最終製品化、米が先行」

(評)
3Dプリンターは、3DCAD(スリー・ディー・キャド)データなどを設計図として入力し、断面形状を積み重ねていくことで立体物を作成する装置。3Dプリンターは、大量生産に向かないとされ、これまでは試作品の生産に使うのが普通だった。今回の開発は、大量生産にも導入されるということで、今後、利用範囲が飛躍的に拡大する可能性がある。
以前、3Dプリンタ-は、樹脂を成型することしか出来なかったため、筺体を試作することくらいにしか使えなかった。しかし、金属等も素材にできるようになったため、最終製品への応用の裾野が広がりつつもある。上記記事によると「米宇宙ベンチャーのスペースXは国際宇宙ステーション(ISS)に向かう宇宙船ドラゴンのエンジン部分を、ニッケル合金を使って3Dプリンターで作製」、「ボーイングは旅客機や戦闘機、人工衛星など10種類以上の製品に、3Dプリンター製の部品を採用した」という。
オバマ米大統領は製造業復活を目指しており、3Dプリンターが米国産業界の大きな武器になると考えている。予算面でも支援を進め、プリンター技術の産官学研究拠点をオハイオ州に設立した。
他方、日本は周回遅れどころか、2周以上遅れている。日経ものつくり14年5月号によると、キヤノンは2014年3月、新規事業の1つとして3Dプリンターを独自開発中であることを明らかにしたが、製品化はまだ先。現在、グループ会社が米3D Systems社の製品を販売しているが、キヤノンが同社に提供している技術等を土台に自社でも開発を進める予定だ。
ただ、日本が遅れているのは製造面ではなく、3Dプリンターの利用面だ。日本は、世界トップの金型技術の上に胡坐をかいているが、3Dプリンターはこうした技術的優位を根底からくつがえすかもしれない。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年09月08日
法律事務所ホームワン