企業法務コラム

労働者派遣法改正案を閣議決定

「政府は29日、先の通常国会で廃案となった労働者派遣法改正案を閣議決定し、衆院に再提出した。」
「(派遣労働者)受け入れ期間は現在、通訳などの専門業務を除き最長3年に制限されている。改正案では、専門業務かどうかの区分をなくした上で、企業が3年を超えて派遣労働者の受け入れを続けたい場合は、労働組合からの意見聴取を条件に働く人を入れ替えて延長できるようにする。」

※参照
2014年9月29日 MSN産経ニュース
派遣法改正案を再提出 「3年上限」廃止

(評)
政府は今年3月に閣議決定し先の通常国会に提出したが、厚労省がチョンボ。派遣事業者に対する罰則規定で本来「1年以下の懲役」とすべき部分を「1年以上の懲役」と誤記したことを、野党に付け込まれ、廃案となった。そのため、今回法案を出し直した訳だ。
注意してほしいのは、個々の派遣労働者がその職場に何年いることができるのかと、当該職場が派遣労働者を何年受け入れられるかは、別次元の話だということ。上記は受け入れ期間の話になる。
前回の労働者派遣法改正案は、個々の派遣労働者がその職場に何年いることができるのかについても改正がなされていた。おそらく今回の改正でもその点が含まれると思われるので、その点も説明するとこうだ。
第1に、派遣の期間制限が「業務から人」になる。これまでは「業務あたり3年」だったのが、「1人あたり3年」になる。例えば、ある業務でAさんが2年働き、その業務をBさんが引き継ぐ場合、従来は残り1年しか働けなかった。しかし改正により、Bさんは3年働くことができるようになる。
第2に、派遣期間が上限3年を迎えた人に対し、派遣会社は以下の4つの「雇用安定措置」をとることが義務化される。
1.派遣先に直接雇用を依頼する
2.新たな就業機会(派遣先)を提供する
3.派遣会社が無期限で雇用する
4.その他、安定雇用の継続を確実に図れる措置
この改正案には一つ落とし穴がある。
派遣会社が、ある従業員を甲社に3年間派遣した後で、B社に3年間派遣すると、派
遣元の有期雇用契約が通算5年を超えてしまうため、労働者の申し込みがあれば労働契約法により「無期労働契約」に転換しなければならなくなる。これを避けようとすれば、派遣元としてはB社には1年半派遣することで、契約を打ち切る必要がある。そうすると派遣労働者の雇用安定も実際は図られない可能性がある。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年10月09日
法律事務所ホームワン