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コンビニ店主は労働者?
コンビニ店主は、労働者でしょうか。
答えは、労働者にはなりえませんが、労働者となる可能性もあります。
言いかえると、コンビニ店主は、「労働基準法上の労働者」ではありませんが、「労働組合法上の労働者」であるとは言えるかもしれないのです。
東京都労働委員会は4月16日、ファミリーマートに、フランチャイズ店主らの労働組合「ファミリーマート加盟店ユニオン」との団体交渉に応じるよう命じました。
コンビニ店主を「事業者」ではなく「労働者」とみなす判断は、都労委が初めてではありません。昨年3月20日の岡山県労委によるセブン―イレブン・ジャパンへの命令(中労委で再審査中)に続く2例目となります。
都労委は「店主は労働力として組み込まれ、顕著な事業者性を備えているとは言えない」として、「労働組合法上の労働者」であると判断した。ファミリーマートは、中労委へ再審査を申し立てるでしょうから、最終的決着はまだまだ先になります。
もっとも、都労委は店主を「労働基準法上の労働者」と認めた訳ではなく、「労働組合法上の労働者」としたものです。労働者は、売り惜しみのきかない自らの労働力を提供して対価を得ているという特殊性から、相手方との個別の交渉において交渉力に格差が生じます。そのため、「労働組合法上の労働者」とは、契約自由の原則を貫徹すれば不当な結果を生じるため、労働組合を組織し集団的な交渉による保護が図られるべき者が幅広く含まれる、と解されています。
労働組合法上の労働者にあたるかは、以下の判断要素を総合勘案して判断されます。
1 事業組織への組み入れ
2 契約内容の一方的・定型的決定
3 報酬の労務対価性
ただ、1から3の一部が充たされないからと言って、直ちに労働者性が否定されず、以下の4、5の補充的判断要素等も含め総合判断することにより労働者性を肯定される場合もあります。
4 1を補完するものとして「労務供給者が、相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係」にあること
5 3を補完するものとして「広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束」の存在1の「事業組織への組み入れ」の事情として、「コンビニ店主が、本部以外の商品を購入できないといったこと」もあげられますが、いまひとつ決め手に欠けます。
しかし、「本部からの業務依頼の拒否に対して不利益取り扱いの可能性」がある、「実際上個別の業務の依頼を拒否できない」、「個別の業務の依頼を拒否する者がほとんど存在しない」等、4に相当する事情はありそうです。
また、3の「報酬の労務対価性」は乏しいのですが、これを補強する5の要素として、「労務供給の態様について詳細な指示がなされている」、「定期的に報告等が要求されている」、「業務量や労務を提供する日時・場所について裁量の余地がない」等の事情はあるようにも思われます。
しかし、過去の労働委員会命令や裁判例をみると、「顕著な事業者性(恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し、自らリスクを引き受けて事業を行っている)」が認められる場合は、判断要素の総合判断の結果として労働者性が否定されます。これに該当する事情として、以下のものがあり、都労委が言うように「店主は労働力として組み込まれ、顕著な事業者性を備えているとは言えない」と言い切ってしまえるかには、疑問があります。
ア 自己の才覚で利得する機会がある
イ 業務における損益を負担している
ウ 他人労働力を利用する可能性がある
エ 他人労働力を利用する実態がある
オ 他に主たる事業を行っている
カ 機材、材料の経費を負担している
コンビニは場所が命です。場所が良ければ、人を使っても利益をあげることができ、逆に人を使うと赤字になるため、店主が長時間労働を強いられているというのは場所が悪いからともいえます。場所は、店主が選択したものであり、その決断に対するリスクを店主が負っているだけとも言えるでしょう。
もし、コンビニ店主に労働組合法上の労働者たる地位が認められた場合、どのような影響が出るでしょうか。FC側には、24時間営業を強制されることや、商品廃棄も売上にカウントされること等に対する不満が根強く、労使交渉が負担額の見直しにつながる可能性もあるかもしれません。すなわち、全国一律の契約の改訂が求められることになるのですが、そうなった場合、フンチャイズの根幹を否定することになりかねません。
法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹
2015年04月17日
法律事務所ホームワン