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B型肝炎訴訟の除斥期間とは?いつから20年? 給付金は除斥期間が20年過ぎていても受け取れます。
目次
除斥期間とは?
B型肝炎給付金は、国が実施した予防接種において、注射器等の消毒がされなかったことで、免疫が不十分な子供の多数がB型肝炎ウイルスに感染したことが不法行為にあたるとして、国の損害賠償責任を前提に国が認めた制度です。
本来、不法行為による損害賠償請求権は、不法行為時から20年たつと請求できなくなります。この20年という期間は「時効」ではなく「除斥期間」というものです。時効の場合は、時効の進行が途中で「中断」され、時効の完成が延びることもあるのですが、除斥期間には中断というものがなく、20年経てば権利そのものが消えてしまいます。
したがって、予防接種によってB型肝炎ウイルスに感染したとしても、20年後には除斥期間により、損害賠償請求権が消滅してしまいそうにも思えます。しかし、B型肝炎ウイルスは感染しても、すぐには活発化せず、何十年も経ってから、急に活発化し慢性肝炎を発症します。さらには、その後、肝硬変、肝臓がんと進展する場合、症状の進展に従って、個別に除斥期間を考える必要も出てきます。
このため、B型肝炎給付金制度は、B型肝炎ウイルス感染時、慢性肝炎発症時、肝硬変発症時、肝臓がん発症時、死亡時とし、それぞれの時点から20年経たないと権利は消滅しないとの考えの下、症状に沿った金額を支給しています。20年経過した場合でも、被害者救済の観点から、本来の額よりは減額にはなりますが、一定程度の給付を認めています。
給付金は除斥期間が20年過ぎていても受け取れる
死亡した場合
死亡時から20年以内の場合、給付金は3600万円になりますが、20年経過している場合、給付金は900万円になります。
肝がんを発症した場合
肝がんを発症後20年以内の場合、給付金は3600万円になりますが、20年経過している場合、給付金は900万円になります。
肝臓に発生するがんは、もともとの肝臓の細胞ががん化してできる「原発性肝がん」と、肝臓以外の臓器にできたがんが肝臓に転移した「転移性肝がん」があり、そのうち、原発性肝がんだけが給付金の対象となります。
肝硬変(重度)を発症した場合
肝硬変(重度)を発症後20年以内の場合、給付金は3600万円になりますが、20年経過している場合、給付金は900万円になります。
肝硬変かどうかは、肝細胞を採取して(肝生検)、顕微鏡で観察すること(病理組織検査)や画像診断、血液検査などで判断されますが、さらに軽度か重度かは「Child-Pugh(チルドパフ)分類」という血液検査等の結果の総合数値による方法で判断されます。
肝硬変(軽度)を発症した場合
肝硬変(軽度)発症後20年以内の場合、給付金は2500万円になりますが、20年経過している場合、直近1年以内において肝硬変の症状があるか、現に治療を受けていれば給付金は600万円、そうでなければ300万円になります。
600万円が認められる第1のケースは、直近1年内に病理組織検査や血液検査、画像検査で肝硬変の診断を受けている場合です。
600万円が認められる第2のケースは、インターフェロン製剤、核酸アナログ製剤、ステロイド、プロパゲルマニウムによる投薬治療を受けたことがある場合です。
直近1年において肝硬変の症状がなく、特定の治療も受けたことがない場合は300万円になります。
慢性肝炎を発症した場合
慢性肝炎を発症後20年以内の場合、給付金は1250万円になりますが、20年経過している場合、直近1年以内において慢性肝炎の症状があるか、インターフェロン製剤、核酸アナログ製剤、ステロイド、プロパゲルマニウムによる投薬治療を受けていれば給付金は300万円、そうでなければ150万円になります。
ALT(GPT)の異常値が6カ月以上継続している場合でなければ、慢性肝炎としての扱いは受けません。
無症候性キャリアの場合
無症候性キャリアで母子感染による二次感染者や三次感染者で感染後20年以内の場合、給付金は600万円になりますが、感染後20年経過している場合、給付金は50万円になります。
再発した場合は、起算点はいつになる?
B型肝炎ウイルス(HBV)が増殖し始めるとHBe抗原がさかんに作られます。これを退治するのがHBe抗体で、いったんHBe抗原が増殖しHBe抗原陽性慢性肝炎となってもHBe抗体の力でHBe抗原が陰性になること(これをセロコンバーションと言います)があり、肝炎は沈静化します。しかし、10~20%の症例ではHBe抗原が陰性の状態で、HBVウイルスが再び増殖し、肝炎が再発することがあり、これをHBe抗原陰性慢性肝炎といいます。
20年以上前にHBe抗原陽性の状態で慢性肝炎を発症し、その後、セロコンバージョンとなり、肝炎が沈静化したものの、その後、過去20年以内にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したというケースについて、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症により生じた損害の賠償を求めている裁判がありました。
第一審の福岡地裁は、HBe抗原陰性慢性肝炎の再発により、先行するHBe抗原陽性慢性肝炎による損害とは質的に異なる新たな損害が生じたと判断し、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症から20年を経過していないため、除斥期間は経過していないとしました。
他方、控訴審の福岡高裁は、いずれの症状もB型肝炎ウイルスへの免疫反応であることに変わりはなく、質的に異なる新たな損害が生じたとは言えないと判断し、除斥期間が経過しているとしました。
この控訴審判決に対し、原告らが上告し、最高裁判所は、2021年4月26日に判決を出しました。最高裁判所は、第一審判決同様、HBe抗原陽性慢性肝炎を発症したことによる損害と、HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害とは、質的に異なるものであり、HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害は、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時に発生したものというべきであると判断しました。そのため、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症から20年以内であれば、HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害の賠償を求めることができることになります。
この最高裁判決が出たことで、20年以上前にHBe抗原陽性慢性肝炎を発症し、セロコンバーションになったが、20年以内にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症した場合には、より1250万円の給付金が支給されることが認められやすくなると考えられます。
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