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集団予防接種などでB型肝炎に感染した場合、なぜ給付金がもらえるのか? なぜ国から給付金がもらえるのかを説明
目次
なぜ、集団予防接種などでB型肝炎ウイルスに持続感染した場合、国から給付金がもらえるのでしょうか?
まずB型肝炎の症状や感染経路、集団予防接種などで感染が増えた原因について説明していきます。
B型肝炎について
B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)が血液など体液を介して感染して起こる肝臓の病気です。
人間には、免疫機能が備わっており、B型肝炎ウイルスを体外に排出しようとして、B型肝炎ウイルスに感染した肝細胞を壊すことにより、肝炎を引き起こします。
B型肝炎ウイルスに持続感染した方のほとんどは、症状がない「無症候性キャリア」となりますが、そのうち、10~20%が慢性肝炎となり、さらに肝硬変や肝臓がんに進行する可能性があります。
B型肝炎ウイルスの感染経路について
B型肝炎の感染経路については、大きく垂直感染と水平感染の2つに分けることができます。
垂直感染とは
B型肝炎ウイルスに感染している母親から、出産時に血液などを介して感染してしまうことです。
乳幼児は、免疫機能が未発達であるため、B型肝炎ウイルスに感染しても、ウイルスを異物として判断できず、そのままウイルスが体内に残り続けてしまいます。
水平感染とは
垂直感染(母子感染)以外の経路からの感染は、水平感染といいます。
水平感染の主な感染経路は以下の通りです。
- 輸血や臓器移植
- 性交渉
- 不衛生な器具による医療行為
- ピアスの穴あけや入れ墨などの器具の使い回し
- カミソリや歯ブラシなどの共有
- 注射器などの使い回し
集団予防接種について
なぜ集団予防接種が行なわれるようになったのか、なぜB型肝炎ウイルスが感染拡大したのかなど、ここではその経緯について説明していきます。
予防接種法制定
日本では、戦後まもないこともあり、多くの方が感染症で命を落としていたことを受け、1948年に「伝染のおそれがある疾病の発生及びまん延を予防するために公衆衛生の見地から予防接種の実施その他必要な措置を講ずることにより、国民の健康の保持に寄与するとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ること」を目的に、「予防接種法」が制定されました。
当時は、12疾病が対象となり、予防接種は怠ると罰則規定もある「義務接種」とされたことから、学校や保健所などに接種対象者を集め、集団予防接種を実施していました。
現在とは違い、当時は、使い捨ての注射器などは一般的ではなかったため、当然のように注射器を使い回し、予防接種を行なっていました。
注射針の交換の指導
海外では、1940~1950年にかけて、すでに注射器の連続使用により、肝炎に感染する危険性は指摘されており、日本でもその危険性については認識されていましたが、国は注射器の連続使用を禁止しませんでした。
その後、1953年、WHO(世界保健機関)が予防接種の際の注射器の使い回しを止めるように勧告した前後で、国は1950年と1958年に注射針を1人1本にするよう通達しましたが、地方自治体に対し具体的な指導を行なわなかったことから、注射器の連続使用が続けられていました。
B型肝炎ウイルスの発見について
1964年にオーストラリア抗原(現在のB型肝炎ウイルス)が発見され、その後、研究を重ねた結果、1970年頃にはB型肝炎ウイルスが特定され、抗原を検出できるようになったことで、B型肝炎ウイルスの感染様式、発生機序、病態等に関する研究が大きく発展することになりました。
その一つとして、1972年からは、すべての日赤血液センターで、献血中のHBs抗原のスクリーニングが行なわれることになり、輸血での感染が大幅に減少することになりました。
上記のような研究が進む一方、集団予防接種などの注射器の連続使用については、禁止されることなく、続けられていたため、さらに感染が拡大することとなりました。
注射筒の連続使用の禁止
1987年、WHOの「肝炎感染予防のため、注射針の交換だけでは交差感染のリスクをなくすことができないため、接種毎に清潔な注射針と 清潔な注射筒が必要である」という報告をもとに、1988年、国は、各都道府県衛生主管部局に対し、注射針だけでなく、注射筒も被接種者ごとに取り替えるよう指導するよう通知し、ようやく被接種者ごとに注射針及び注射筒を交換することとなりました。
なぜ、国から給付金がもらえるのか?
集団予防接種などが原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した場合、なぜ給付金がもらえるようになったのでしょうか。ここでは、その経緯について説明いたします。
最初の訴訟
1989年6月、集団予防接種の注射器連続使用によってB型肝炎ウイルスに持続感染し、肝炎が発症したとして、原告5名が、国を相手に、被害賠償を求めて、札幌地裁に提訴しました。
その裁判は、約17年もの年月がかかりましたが、2006年6月に、最高裁は国の責任を認める原告勝訴の判決を言い渡し、賠償金を支払いました。
しかし、国は原告5名に対しては責任を認めたものの、その他の感染者に対しての責任は認めませんでした。
全国での訴訟
2008年、全国の感染者及びその遺族が、すべての感染者に対する損害賠償を求め、全国10地裁で国を相手に提訴しました。
その結果、2011年、札幌地裁は国に対し、「所見(基本合意書案)」を提示し、国はその責任を認め、感染被害者及びその遺族の方々に謝罪したうえで、国と原告らは、基本合意書案のとおりに合意することになりました。
特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法成立
上記合意を経て、2012年1月、「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」が成立し、集団予防接種などが原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した方(遺族を含む)が、給付金請求を行なえるようになりました。
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