コンプライアンス

不正競争防止法不正競争防止法とは

不正競争防止法の構造

条文 規定内容
1 法の目的
2 不正競争の9類型
19 形式上2条に該当する行為があっても規制の対象外となる場合(適用除外規定)
3~15 2条の不正競争行為があった場合の民事上の対抗措置
16~18 外国国旗・紋章、国際機関の標章の不正使用、外国公務員への贈賄
21、22 罰則規定
23~31 刑事訴訟手続きの特例

不正競争の9類型

不正競争の周知な商品等表示の混同惹起(2条1号)類型

地方レベルで需要者に知られている他人の商品の表示と同一ないし類似のものをつけた商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供(以下「販売等」といいます。)して、販売等し、当該他人の商品または営業と混同させる行為

周知性

勝烈庵事件(横浜地判昭58.12.9)は、横浜駅ないし横浜市中区常磐町周辺地域において広く認識されているとして、周知性を肯定しています。

混同

「混同ヲ生ゼシムル行為」とは、他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と右他人とを同一営業主体として誤信させる行為のみならず、両者間にいわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為(以下「広義の混同惹起行為」という。)をも包含し、混同を生じさせる行為というためには両者間に競争関係があることを要しません。

スナックシャネル事件

世界的企業のシャネルが、松戸市内でスナックシャネルの名称でスナックを営む者に対し、表示の使用差止め等を求めた裁判で、最高裁は「シャネルの表示の周知性が極めて高いこと、右企業グループの属するファッション関連業界の企業においてその経営が多角化する傾向にあることなど判示の事実関係の下においては、「スナックシャネル」の表示の使用は、右企業グループに属する企業についていわゆる広義の混同を生じさせる行為に当たる。(スナックシャネル事件・最判平10.9.10)

適用除外

商品・営業の普通名称や慣用表示を普通に用いる方法での使用(19条1項1号)

  • 普通名称(例:「弁当」、「酒」、「醤油」、「黒酢」)
  • 慣用表示(例:「幕の内」(弁当)、渦巻き看板(床屋))
  • 自己の氏名の不正の目的でない使用(1項2号)
  • 周知性獲得前からの不正の目的でない使用(1項3号)

著名な商品等表示の冒用(2号)

全国レベルで、需要者でない者にも知られている他人の商品の表示と同一ないし類似のものを付けた商品を、自己の商品を表示するものとして販売等する行為(混同要件は不要)。

  • 著名性肯定例:マクセル、Budweiser、ピーターラビット、三菱のスリーダイヤマーク、JACCS、青山学院、虎屋、虎屋黒川、菊正宗、セイロガン糖衣A、ELLE、プルデンシャル

著名表示自体が顧客誘引力を持ち、個別の商品及び営業を超えた独自の財産的価値を持つに至ることから、それを保護しようというのが本号の趣旨です。したがって単に著名表示を 冒用するだけでなく、著名商標のフリーライド、汚染、希釈化の何れかと評価されるものであるを要します。

  • 顧客吸引力の不当な利用:ブランドイメージが顧客吸引力を有し、これにただ乗りすることになる(フリーライド)
  • ブランドイメージの汚染:高級イメージの定着している表示が低俗・低価値の商品・営業に冒用されることで当該高級イメージが汚染される
  • ブランドイメージの稀釈化:著名商標の商品または役務を特定し、識別する能力を減じさせる。

スナックシャネル事件の商品等表示の冒用

シャネルの知財管理会社が中目黒の「歌謡スナックシャネル」に対し表示の差止、損害賠償を請求した事件で「被告の店舗は、前記のとおり、中目黒駅付近のいわゆるガード下に位置する小さなスナックであって、庶民的なイメージはあっても、シャネルの高級なイメージとはほど遠く、これによってシャネルの高級イメージを希釈し、この点においてシャネル社グループの営業上の利益を害して、ひいては(東地平成6年4月27日)、シャネル社グループの一員である原告の営業上の利益を害している。」とした。

適用除外

  • 商品・営業の普通名称や慣用表示を普通に用いる方法での使用(19条1項1号)
  • 自己の氏名の不正の目的でない使用(1項2号)
  • 周知性獲得前からの不正の目的でない使用(1項3号)
商品等表示の知名度・認知度 商品等表示の範囲 混同の要否 不正とされる行為の態様
1号 <周知>需要者の間で広く知られている 同一又は類似 他人の商品又は営業と混同を生じさせる 使用、使用した商品を譲渡、引き渡し、譲渡又は引き渡しのために展示、輸出、輸入、電気通信回線を通じて提供
2号 〈著名〉 全国的に需要者以外にも広く知られている (混同は必要ない) 自己の商品等表示として

他人の商品形態を模倣する商品の提供(3号)

他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く)を模倣した商品を販売等する行為。

商品の形態

需要者が通常の用法に従った使用に際して視覚及び触覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢、質感(2条4項)

商品の内部の形状・構造はどのような場合本号の適用対象となるか

  • 肯定例:小型ショルダーバッグ(東京地判平13.12.27)
  • 否定例:排水ドレンホース(大阪地判平8.11.28)

ヌーブラ事件

他人の商品形態を模倣する商品かどうかは、需要者に容易に認識され、注目されるか否かによって決まる。 外観上の基本的な形態は同一だがブラジャーの機能面からすればやむを得ないものであり、カップ部分の質感や艶といった印象は、女性消費者が購入するブラジャーの選択に際し着目する重要なポイントであり、これの質感や艶の相違は些細なものとはいえないとして商品の形態の実質的同一性を否定。(ヌーブラ事件大阪高H18.4.19)

模倣

他人の商品の形態に依拠して(独自に創作した場合は該当しない)、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すこと。

適用除外

他人の商品の形態に依拠して(独自に創作した場合は該当しない)、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すこと。

  • 商品・営業の普通名称や慣用表示を普通に用いる方法での使用(19条12項1号)
  • 自己の氏名の不正の目的でない使用(1項2号)
  • 著名性獲得前からの不正の目的でない使用(1項4号)
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営業秘密の侵害(4~9号)

この件は別項目を設けていますので、そちらをご確認ください。

営業秘密

技術的制限手段を解除する装置等の提供(10、11号)

平成11年改正で新設、平成23年改正で規制強化されました。

営業上用いられる技術的制限手段により、映像又は音の視聴・記録・複製が制限されているコンテンツの視聴・記録・複製を可能にする(回避する)装置、当該装置を組み込んだ機器又はプログラムを譲渡等する行為。

若しくは当該機能を有するプログラムを記録した記録媒体若しくは記憶した機器を販売等する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)。

技術的制限

「アクセス・コントロール」「コピー・コントロール」「コピーガード」などを実現するための技術。

  • 例:DVDに、制御用の信号発信装置を組み込み、コンテンツの録画を制限する方式
  • 例:特定のビデオ機器以外では解読できない形でコンテンツを暗号化している方式

営業上用いられるプライバシー保護のための技術的制限回避装置は対象外

  • 装置(例:キャンセラー装置)
  • 当該装置を組み込んだ機器(例:キャンセラー内蔵ビデオ等)

組み立て用のキット一式

当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものも対象となります。

無反応機器は対象外

フラグ方式(特定のフラグ信号を機器側で読み取りコントロールを作動させるものなど)によるアクセス・コントロール及びコピー・コントロールについては、いわゆる「無反応機器」の問題があります。無反応機器は、それらの効果を「妨げる」ものではなく、それらに「反応しない」ものであり、現在、規制の対象となっていません。

無反応機器を規制すると、その結果として機器側にすべてのアクセスコントロール及びコピーコントロールに反応することを義務付けることになるため、無反応機器一般については規制すべきではないと解されているためです。

しかしながら、実態として回避することと同じ効果が得られることを名目に、特殊な無反応機器を販売しているケースがあります。例えば、地上デジタル放送については、アクセスコントロール及びコピーコントロールの組み合わせによって著作物を保護しているが、コピーコントロール(ダビング10等)に関する特殊な無反応機器の流通が今後問題となってくるでしょう。

プログラム

当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含みます。

多機能併有する場合の限定

当該装置又はプログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、映像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限ります。

平成23年改正の要点

平成23年12月1日より施行されています。

  • 規制対象装置等の範囲が拡大されました。

    • 改正前:回避機能のみを有する装置が対象。
    • 改正後:回避機能とその他の機能を持つ装置も対象になる。
  • 規制対象装置の部品一式も規制の対象に追加されました。

    • 改正前:完成品のみが対象。
    • 改正後:完成品だけでなく、当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。
  • 技術的制限手段回避装置等の提供行為への刑事罰の導入(21条2項4号)

    不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、第2条第1項第10号又は第11号に掲げる不正競争を行った者(5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科。法人処罰は3億円以下の罰金)

  • 技術的制限手段回避装置を輸出入禁止品に追加し、水際取締りを強化(関税法関税法69条の4、69条の13)。なお、混合を惹起・著名商品等表示を冒用

ドメインネームの不正取得等(12号)

図利加害目的(トリカガイモクテキ/不正の利益を得、又は、他人に損害を与える目的)で、他人の商品・役務の表示(特定商品等表示)と同一・類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有またはそのドメイン名を使用する行為。

不正の利益を得る目的

公序良俗、信義則に反する形で自己または他人の利益を不当に図る目的。

他人に損害を与える目的

他人に対して財産上の損害、信用の失墜等の有形無形の損害を加える目的のある場合。

  • 自己の保有するドメイン名を不当に高額で売りつける目的、他人の顧客誘引力を不正に利用して事業を行う目的、又は、当該ドメイン名のウェブサイトに中傷記事や猥褻な情報等を掲載して当該ドメイン名と関連性を推測される企業に損害を加える目的は、他人に損害を与える目的にあたる(東地平14.7.15、MP3ドメイン名事件)
  • 原告の著名な商品等表示である「maxell」と類似する「maxellgrp.com」というドメイン名を使用し、ウェブサイトを開設して、その経営する飲食店(風俗業)の宣伝を行っていた会社に対し、使用許諾料相当額(第5条第3項)の損害賠償が命ぜられた事例(マクセルコーポレーション事件、大阪地判平16.7.15)
  • 原告の商号である「電通」と類似する「dentsu.org」など8つの'dentsu'を含むドメイン名を取得・保有し、原告に10億円以上の金員で買い受けるように通告してきた被告に対し、ドメイン名の取得、保有及び使用の差止めと登録抹消申請手続、損害賠償(50万円)が命ぜられた事例(dentsuドメイン名事件、東地平19.3.13)

商品・サービスの原産地、品質等の誤認惹起表示(13号)

商品や役務の広告、包装等で、商品の場合はその原産地・品質・内容・製造方法・用途・数量について、役務の場合はその質・内容・用途・数量について、誤認させるような表示をし、又はそのような表示をした商品を販売等する行為。虚偽広告、誇大広告ばかりではなく、根拠なき比較広告、おとり広告も誤認惹起表示に該当します。

  • 国産ヘアピンの包装面に「外国の国旗」を印刷したシールを貼り付けて販売した事業者に対し、国産品を外国製と誤認させるおそれがあるとして、当該商品の販売差止が命じられた事件(世界のヘアピン事件・大阪地平8.9.26)
  • 自動車用ワックスの大手メーカーのウィルソンが、「新車の輝きをいつまでも」「その輝きにワックスはいらない」「5年間完全ノーワックスを実現」などと宣伝し、自動車へのテフロン皮膜加工を行っていた中央自動車工業を、虚偽表示であるとして訴え、1審判決は誤認惹起表示であることを認め、表示・広告の差止、1000万円の賠償を命じた。しかし、知財高裁は「5年後に、93.7%、96.1%の光沢を維持しているデータがあること」「新車の輝きは、多分に見る者の主観によるところが大きく、ある程度の幅を持つものであること」などを理由に誤認惹起行為はなかったとし、ウィルソンの請求を全て棄却した(新車の輝き事件・知財高判平17.8.10)。
  • 「ライナービア」との商品名の、酒税法上のビールに該当しない飲料について、「ビア」も「ビール」も同一義に使われている以上、「ビール」に当たるものと誤認させるとして、不正競争を肯定(ライナービア事件・東地昭36.6.30)
  • 酒税法上2級酒であったのを「特級」と表示する行為は、たとえその清酒の品質が実質的に清酒特級に劣らない品質のものであったとしても、不正競争になる(清酒特級事件・最高決昭53.3.22)

コラム:2級酒なのに「特級」表示?

当時清酒は、特級、1級、2級に種別され、税率も特級、1級、2級の順に高くなっていました。審査員が製品の色を1点、香りを3点、味を6点という配分で点数をつけ(総計10点満点)、点数により1級、特級との認定が行われていました。

審査を受ける、受けないは自由ですが、審査を受けない場合は2級となりました。美味しい清酒を造っても、顧客に高い税金を払わせるのは面白くないと考えて、敢えて審査には出さず2級酒として販売する蔵元もありました。このため、中には特級酒より2級酒の方が、美味しかったり、プレミアがついて高値で取引されることもありました。清酒の種別は、単に税務署が高い税金を取るだけための制度に堕していたのです。

このため、消費者団体からも反対の声が起こり、財務省はこの制度を廃止しました。このため、中には「俺の酒は酒税法上は2級だが味は特級だ」ということで、このような表示をした蔵元もあったのかもしれません(反骨精神が旺盛だったのか、単に高値で売ろうとしただけなのかは不明ですが)。

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信用毀損行為(14号)

競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為 これについては、以下のハンガークリップ事件判決(東地平18.8.8)の判示内容を引用しますので、ご参考下さい。

事案

ハンガークリップにつき特許権を有する被告が、原告の製品が被告の特許を侵害するものだとして、大手スーパーに原告製品が特許権を侵害しているとして警告文を送った。しかしその後被告の同特許が新規性ないしとして特許が取り消された。原告が被告に対して、提訴した。

原則

特許権者によるその告知行為が、その取引先自身に対する特許権等の正当な権利行使の一環としてされたものであると認められる場合には、違法性が阻却されると解される。

例外

特許権者が競業者の取引先に対する訴え提起の前提としてなす警告も、特許権者が事実的、法律的根拠を欠くことを知りながら、又は特許権者として、特許権侵害訴訟を提起するために通常必要とされる事実調査及び法律的検討をすれば、事実的、法律的根拠を欠くことを容易に知り得たといえるのに、あえて警告をした場合には、競業者の営業上の信用を害する虚偽事実の告知又は流布として違法となると解すべきである。

競業者の取引先に対する上記告知行為が、特許権者の権利行使の一環としての外形を取りながらも、社会通念上必要と認められる範囲を超えた内容、態様となっている場合、すなわち、その実質が競業者の取引先に対する信用を毀損し、当該取引先との取引ないし市場での競争において優位に立つことを目的としてされたものであると認められる場合には、もはやこれを正当行為と認めることはできない。

判断基準

当該警告が特許権の権利行使の一環としてされたものか、そのような外形を取りながらも、社会通念上必要と認められる範囲を超えた内容、態様となっているかどうかについては、当該警告文書等の形式、文面のみならず、当該警告に至るまでの競業者との交渉の経緯、警告文書等の配布時期、期間、配布先の数、範囲、警告文書等の配布先である取引先の業種、事業内容、事業規模、競業者との関係、取引態様、当該侵被疑製品への関与の態様、特許権侵害訴訟への対応能力、警告文書等の配布に対する当該取引先の対応、その後の特許権者及び当該取引先の行動等の、諸般の事情を総合して判断するのが相当である。

あてはめ

出願経過、警告書送付までの期間において、新規性・進歩性の要件について問題があるような指摘されたことはない。本件特許権が無効であることを知っていたとは認めることはできない。経緯、その内容・態様も社会通念状必要と認められる範囲を超えたものではない。進歩性の判断は微妙な判断を必要とし、また、審決・裁判で無効とされたとはいえ、これらは慎重な検討の上の判断だから。各警告書の送付前に再度本件特許権の有効性に関する調査検討を全く行わなかったこと等慎重さを欠いた面は否定できないが、本件特許権が無効であることを通常人であれば容易に知り得たにもかかわらず、あえて権利侵害の告知を行ったものとまで認めることはできない。

代理人等の商標冒用行為 (15号)

パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の代理人が、正当な理由なく、その商標を使用等する行為。

国際約束に基づく禁止行為

  • 外国国旗、紋章等の不正使用(16条)
  • 国際機関の標章の不正使用(17条)
  • 外国公務員への贈賄(18条)

米国海外腐敗防止法は、米国籍子会社、米国に上場する外国企業、米国人を雇用する外国企業にも適用されます。課徴金、罰金も高額で、2011年、日揮は2億1880ドルの支払いを命じられました。

不正競業行為への民事上の措置

差止請求権(3条)

不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。さらに、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害行為に供した設備の除却その他侵害の停止または予防に必要な行為を請求することができます。

侵害されるおそれ

  • 利益侵害の発生について相当の可能性があれば足りる。(ライナービア事件・東京高昭38.5.29)
  • 2条1項1号にいう商品の混同の事実が認められる場合には、特段の事情がない限り営業上の利益を害される恐れがある。(マックバーガー事件・最高判昭56.10.13)

請求権者

ライセンシー、公益法人、病院、NPO法人等の公益事業や非営利事業をする者にも認められます。

侵害の行為を組成した物

他人の商品等表示の付された看板、営業秘密の入ったメモリースティック。

侵害行為に供した設備

他人の商品形態を模倣するための製造設備(金型等)。

意匠法

意匠法37条も、意匠権侵害行為に対する差止めの態様として、上記と同様、差止請求、侵害予防請求、侵害行為組成物の廃棄・侵害行為提供設備除却等の請求を認めています。

時効・除斥期間

営業秘密の不正使用行為に対する差止請求権については、侵害行為を知った時から3年の消滅時効、侵害行為の開始時から10年の除斥期間の定めがあります(15条)。営業秘密以外の差止請求権についてはこの規定の適用はありません。

信用回復措置請求(14条)

故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の信用を害した者に対して、裁判所は被侵害者の請求により、損害賠償に替えて、信用回復措置を請求することができます。 具体的には、新聞等への謝罪広告が考えられます。

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損害賠償請求権

(1)損害賠償請求(4条)

故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者に対して、損害賠償を請求することができます。

(2)損害額の推定(5条)

  • 被害製品の単位数量当たりの利益額×侵害品の販売数量を損害と推定します(1号)。 周知な商品等表示の混同惹起(1号)、著名な商品等表示の冒用(2号)、他人の商品の形態の模倣品提供(3号)、営業秘密のうち技術情報にかかる侵害(4~9号)、代理人等の商標冒用行為(15号)に適用があります。
    但し、被侵害者の販売等を行う能力に応じた額以内であるを要し、被侵害者が、販売数量の全部又は一部に販売することができない事情が存在する場合、その分の数量に応じた額を控除します。
  • 侵害者がその侵害によって利益を受けている時は、その利益の額が権利者の損害の額と推定されます(2号)。ただし、この場合も、侵害者の競合品等の反証によって推定を一部覆される可能性があります。全ての不正競争行為に適用があります。

    氷見うどん事件

    富山県氷見市において製造されていないうどんを「氷見うどん」等の表示を付けるなどして販売した業者に対して、誤認惹起行為に該当し、かつ、法5 条2 項の規定を適用して高額の損害賠償額(約2億4000万円)を認めたものがある。(氷見うどん事件・名古屋高平19.10.24) 同判決は、「侵害者の氷見市外からの仕入分の売上高-売上原価-販売管理費」に、被侵害者の市場占有率(※1)を乗じ、侵害者が被侵害者に対する寄与率3割(※2)を除いた7割を乗じた金額を損害額とした。

    氷見市内の同業者7社中、侵害者を除く6社の売上合計高がX円、被侵害者の売上高がY円だとする、Y÷Xを市場占有率とした。

    元々侵害者の発祥たる高岡屋が250年前に氷見産のうどんを献上したことが、氷見うどんが世に知られるきっかけをなしており、ただ侵害者も当時の技法をそのまま伝えている訳ではないこともマイナス要素として加味し、侵害者の被侵害者の売り上げへの寄与率を3割とした。

  • 故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対し、次の不正競争行為に対し受けるべき金銭の額に相当する額を、損害額として賠償を請求することができます(3号)。

    • 周知な商品等表示の混同惹起、著名な商品等表示の冒用
      →当該侵害に係る商品等表示の使用許諾料
    • 他人の商品の形態の模倣品提供
      →当該侵害に係る商品の形態の使用許諾料
    • 営業秘密のうち技術情報にかかる侵害
      →当該侵害に係る営業秘密の使用許諾料
    • ドメインネームの不正取得等
      →当該侵害に係るドメイン名の使用許諾料
    • 代理人等の商標冒用行為
      →当該侵害に係る商標の使用許諾料

    使用許諾料は、既に許諾例がある場合はその金額を、まだ許諾例がない場合はそれぞれの分野での両立の一般的な相場を参考にして裁判所が決定します。

損害のための鑑定(8条)

裁判所が損害額を計算するため、公認会計士等の鑑定人を選任することがありますが、帳簿類が内部資料のため、略号があったり、当該企業独自の用語があったりと、プロが見ても内容を理解できないときがあります。このため、当事者は、鑑定人に対し、そういった鑑定をするため必要な事項を説明しなければなりません。

相当な損害額の認定(9条)

不正競争による損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができることとされています。 民事訴訟法248条も同様の規定をするが、本条の場合は、以下の場合にも適用が可能とされます。

  • 被侵害者の商品等表示や営業秘密の寄与度
  • 侵害者の販売数量(立証は可能だがコストがかかる)

具体的態様の明示義務(6条)

被侵害者は、訴訟で、不正競争行為を組成した物または方法を特定する必要があります。デッドコピー等の現物であれば特定は容易ですが、例えば侵害者が被侵害者の設計図を不正入手し製品を生産しているような場合、侵害者が真摯に対応しなければ、侵害行為の内容が特定できず、争点整理も進みません。

そのため6条は、侵害行為の立証を被侵害者だけに負わせることなく、侵害者にも自己の行為の具体的態様を明示する義務を課すことで、侵害行為の特定に侵害者を積極的に関与させ、訴訟審理の適正な進行と迅速を図ろうとしたものです。

書類提出命令(7条)

裁判所は、当事者の申立てにより、当該侵害行為ないし損害の計算をするため、必要な書類の提出を命ずることができます。侵害者、被侵害者の何れも申立できます。開示を求める書類としては、貸借対照表、損益計算書、月別又は取引先別の売上帳・仕入台帳、注文書、納品書、売上伝票などがあります。

当該書類を開示することで営業秘密を侵害される等、開示しないことについて正当な理由がある場合、書類の提出を拒むことができます。裁判所は正当な理由の有無を判断するために、その所持者に裁判所宛に「提示」させ、非開示の状況で裁判官のみによる審理を行うインカメラ手続をすることができ、必要な場合に限り、当事者、代理人に開示できます(必要がなければ開示しなくて良い)。

秘密保持命令(10~12条)

(1)要件(10条)

次の2点の疎明があった場合、当事者等に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、この命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができます。(不服ある場合は即時抗)

  • 準備書面の記載または証拠に営業秘密が含まれていること。
  • 営業秘密が訴訟追行目的以外の目的で使用され、又は開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため当該営業秘密の使用又は開示を制限する必要があること。

(2)秘密保持命令の取消(11条)

営業秘密の内容が既に特許出願されていたが、その後公開され、営業秘密としての要件を欠くに至った場合等、後に前記2点の事実がなくなることもあるので、そのような場合、裁判所は、申立があれば、秘密保持命令を取り消します。

(3)訴訟記録の閲覧の請求の通知(12条)

秘密保持命令が発生られた訴訟において、民事訴訟法92条の規定により閲覧制限がされている場合でも、当事者は閲覧請求できるが、請求した者が秘密保持命令の対象外の場合、裁判所は当該請求のあったことを秘密保有者に通知しなければなりません。秘密保有者は請求手続きを行ったものに対して、秘密保持命令の申立をすることになります。

当事者尋問等の公開禁止(13条)

裁判所は、次の二つの事実ある場合、裁判官の全員一致により、当事者尋問、証人尋問を公開しないで行うことができます。

  • 当該当事者ないし証人が、公開の法廷では、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に著しい支障を生ずることが明らかであるため、当該事項について十分な陳述をすることができないとき。
  • 当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該事項を判断の基礎とすべき不正競争による営業上の利益の侵害の有無についての適正な裁判をすることができないとき。

信用回復の措置(14条)

前述した通りです。

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刑事罰

個人への罰則(21条)

(1)営業秘密侵害罪(1項)

10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金(併科可)

  • 図利加害目的で、詐欺等行為又は管理侵害行為によって、営業秘密を不正に取得する行為
  • 不正に取得した営業秘密を、図利加害目的で、使用又は開示する行為
  • 営業秘密を保有者から示された者が、図利加害目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、(イ)媒体等の横領、(ロ)複製の作成、(ハ)消去義務違反+仮装、のいずれかの方法により営業秘密を領得する行為
  • 営業秘密を保有者から示された者が、第3号の方法によって領得した営業秘密を、図利加害目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、使用又は開示する行為
  • 営業秘密を保有者から示された現職の役員又は従業者が、図利加害目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、営業秘密を使用又は開示する行為
  • 営業秘密を保有者から示された退職者が、図利加害目的で、在職中に、その営業秘密の管理に係る任務に背いて営業秘密の使用又は開示の約束し又は請託を受け、退職後に使用又は開示する行為
  • 図利加害目的で、b、d、e、fの罪に当たる開示によって取得した営業秘密を、使用又は開示する行為

(2)その他の罪(2項)

以下の要件に該当する者は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金(併科可)

  • 時不正の目的をもって行う、混同惹起行為(1号)、誤認惹起行為(13号)
  • 他人の著名な商品等表示に係る信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的で、又は当該信用若しくは名声を害する目的で行う、著名表示冒用行為(2号)
  • 不正の利益を得る目的をもって行う、商品形態模倣行為(3号)
  • 不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、技術的制限手段を回避する機能を有する装置を譲渡等する行為(10号、11号)
  • 商品又は役務の品質、内容等について誤認させるような虚偽の表示をする行為(13号)
  • 秘密保持命令違反(10条)
  • 外国の国旗等の商業上の使用等(16、17条)、外国公務員等に対する贈賄行為(18条1項)

(3)親告罪(一部)

(4)国外犯(一部)

(5)刑法による処罰を妨げない

法人処罰(22条)

営業秘密侵害罪の一部とその他の侵害罪の全部:3億円以下の罰金
両罰規定

営業侵害罪における営業秘密の保持への配慮(23条)

  • 裁判所は、被害者等の申出に応じて、一定の範囲を決めて営業秘密(営業秘密構成情報特定事項)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定(秘匿決定)をすることができるものとします。
  • 裁判所は、秘匿決定をした場合には、営業秘密の内容を特定させることとなる事項につき、呼称等(例:薬品A、特性B、C社)の決定を行うことができるものとします。

起訴状の朗読(24条)

秘匿決定があったときは、起訴状の朗読は、営業秘密構成情報特定事項を明らかにしない方法で行います。

尋問等の制限(25条)

裁判長は、秘匿決定があった場合において、冒頭陳述、論告、罪状認否、弁論、最終陳述、証人尋問、本人尋問を制限できるものとされています。

公開原則の例外(27条、28条)

秘匿決定をした場合において、証人等の尋問を公判外期日(非公開の法廷)で行うことができ、その場合、尋問の要領を記載した書面の提出を予め求めることができます。

証拠書類の朗読(29条)

営業秘密構成情報特定事項を明らかにしない方法で証拠書類の朗読を行います。

公判前整理手続等における決定(29条)

次の決定は、公判前整理手続及び期日間整理手続で行うことができます。

  • 秘匿決定若しくは呼称等の決定又はこれらの決定を取り消す決定
  • 証人尋問等を公判期日外で行う決定

証拠開示の際の営業秘密の秘匿要請(30条)

公判記録の閲覧制限

最高裁判所規則への委任(31条)

平成23年に「不正競争防止法第23条1項に規定する事件に係る刑事訴訟手続の特例に関する規則」が制定された。

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