従業員の不祥事

SNSへの問題写真投稿問題社員を投稿した際の削除命令と対応方法

不適切写真投稿の実例

2013年、アルバイト従業員がSNSに投稿した写真がネット上で話題になるという事件が相次いでありました。

  • 弁当チェーンの従業員が、食材などが保管されている冷蔵庫に自ら入り込んでいる写真を、「今日暑くね?」というコメントとともにTwitterに投稿。
  • ハンバーガー店のアルバイト従業員が、床に転がった大量のバンズの上に寝転がっている写真を「いやー平日なのにさ。なんで混むのさ。ワッパーJr何個作ったと思ってんの?ちょっとさ空気読もうよ」とのコメントともにTwitterに投稿。
  • サッカーの有名選手が来店した、と防犯カメラの映像をコンビニエンスストア店員がTwitterに投稿。

2014年の9月にも、回転ずし店のアルバイトがハサミを天ぷらにしてしゃりに乗せた写真を「新メニュー作ったぞー!」とのコメントとともにTwitterに投稿。こうした不適切写真の投稿が今後も繰り返されそうです。

威力業務妨害罪

コンビニ店の冷凍庫内で寝転ぶ様子を撮影し、ツイッターに投稿して営業を妨害したとして、京都府警は、13年9月6日、男子高校生計3人を威力業務妨害の疑いで書類送検しました。

その結果、どうなったかは不明ですが、当該企業の食品衛生に疑念を生じさせるような写真投稿については、威力業務妨害罪で告訴することも考えられます。 ただ略式起訴までも行くかどうか、微妙なところでしょう。

損害賠償

さらに、損害賠償も可能だとは思いますが、損害額の算定に苦労しそうです。会社としては、店内の食材を全て廃棄したり、消毒をやり直したり、といった対処を迫られるため、こうした費用を損害として賠償請求したいことでしょう。

しかし上記の例でバンズに転がった従業員を例に取ると、従業員が寝転がったバンズだけを廃棄すればいいはずです。弁当チェーンの従業員の件にしても、冷蔵庫だけ清掃すればよく(どの冷蔵庫かが客に分かりませんから、全冷蔵庫を清掃する必要はあるでしょう。)、店内の食材も包装を開披されたものだけを廃棄すればよく、それ以上のことをした場合には、その賠償は認められない可能性が高いと思います。

ただ、社内の引き締めのため、当該従業員に対して損害賠償を求め、裁判を起こすことを考えても良いと思います。

就業規則での対応

就業規則の服務規律の個所には、たいてい「会社の信用や名誉を失墜させるような言動をしてはならない。」といった条項が入っているでしょうし、解雇事由、懲戒事由でも「その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき」といった包括条項が入っているでしょうから、これを適用することで懲戒することも可能です。

ただ労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とあり、日頃どのような会社が教育指導を行っていたか、従業員のこれまでの実績、勤務態度及び勤怠、指導経過を考えて、処分する必要があり、一足飛びに解雇を言い渡しても、解雇が有効と判断されない可能性もあります。従って、当該従業員には辞表を出してもらうよう努めるべきでしょう。

就業規則上、服務規律に「事業所内の内装、什器備品の一切、来場客を写真撮影してはならず、撮影した写真を、SNSに投稿する等してネット上にアップロードする等一切公開してはならない」と、はっきりうたうべきでしょう。

そうして、違反があった場合には、懲戒するだけでなく「違反して撮影した写真があれば、これをデータ上削除し、複製物があれば破棄し、ネット上公開されているものがあればこれを削除する。プロバイダーを通じてでなければ削除しえない場合は、プロバイダーに削除請求をするのに協力する。」との規定を設けることも必要です。こうした行為は、業務外の事柄ですので、会社の業務命令権には含まれないからです。

従業員に対する教育

SNSには、利用者も意識していない機能がいろいろあり、こうした機能が元で、起業所法、個人情報が流出することがあります。また悪質業者がわなを仕掛けているばあいもあります。したがって、従業員に対して、SNSについて理解を深める研修が必要でしょう。例えば、気をつけるべき場面としては次のものがあります。

  • iPhoneは内蔵するGPS機能を使い、撮影した場所の緯度と経度を自動的に写真データに付加します。iPhoneでは、この「位置情報サービス」が初期設定で有効になっているため、ビジネス用に使うのであればこの機能を無効にすべきでしょう。こうした位置情報から住所を割り出したりするソフトウエアも数多くあり、いつどこにいるかが分かってしまい、そこが企業秘密漏えいの入口になる可能性もあります。
  • 個人でアダルトサイトを訪問すると、いつの間にか押したボタンにFacebookのリンクボタンが仕込まれていたため、個人のFacebookアカウントの友人・家族・職場の全員に、アダルト動画が送信されることがあります。このスマホがビジネスにも使われていた場合、取引先にも悪影響が及びかねません。
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