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無期転換社員ルールにおける対処法高齢者雇用における法的留意点
- 問題社員についても契約更新を続け、5年を経過してしまうと、無期転換ルールにより、有期契約社員から無機契約社員に変わってしまいます。
- 無期転換ルールを定めた労働契約法17条に該当しないよう勤める必要があります。例えば、更新期間に上限を設ける、最初から3年、5年といった長期の更新のない雇用契約にする、クーリング期間を設ける等の方法を検討する必要があります。
- それでも該当してしまった場合、影響を最小限に留めるため、就業規則を整備して、うっかり正社員と同様、賞与規定、退職金規定等が適用されることがないように気をつける必要があります。逆に、正社員と同様、定年制が適用されるようにしなければなりません。
無期転換社員ルールと問題社員
問題社員が無期契約社員の場合、雇い止めで対処することも可能ですが、これを怠った結果、勤続5年を経過した問題社員が、無期転換申込みをしてきた場合は困難な問題を生じます。
無期転換社員ルール
無期転換社員ルール
無期転換ルールは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が更新されて通算5年を超えた場合、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。
平成30年4月から問題が現実化
このルールは、平成24年8月に成立した「改正労働契約法」18条で設けられたもので、平成25年4月1日から施行されているため. 平成30年4月1日以降、定年を迎えた社員による無期転換申込みされるケースが出てきています。
概要
例えば、契約期間が1年の場合、5回目の更新後の1年間に(6年目に)、契約期間が3年の場合、1回目の更新後の3年間に無期転換の申込権が発生します。
無期転換申込権の発生後、有期契約労働者が会社に対して無期転換の申込みをした場合、原則、使用者は承諾したとみなされるため、使用者はこれを断ることができません。この場合、申込時の有期労働契約が終了する日の翌日から無期労働契約が成立します。
転換後の労働条件
無期転換後の給与などの労働条件は、就業規則等で「別段の定め」がある部分を除き、直前の有期労働契約と同一の労働条件となります。「別段の定め」をする場合には、適用する就業規則にその旨を規定する必要があります。
無期転換社員ルールと問題社員
更新拒絶で押し止める
社員が無期転換申込みをして来る前に、解雇することができるでしょうか。契約期間中の解雇について、労働契約法17条は「やむを得ない事由」がない限りできないとしており、正社員の解雇以上に要件が厳しく定められています。
では、予め更新拒絶を言い渡すことは認められるでしょうか。いざ、社員が更新を申し出てきた場合、労働契約法19条1項は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」でない限り、これを拒絶することができない旨を定めています。
更新期間に上限をつける
入社時において更新期間に上限が設けていればともかく、入社後に上限を設けた場合、既に労働者に更新への期待を生じさせている場合は、新たな上限規定を設けても更新を拒絶できないことになります。
クーリング期間を設ける
有期雇用契約終了後、6ヶ月以上経てから、再度有期雇用契約を開始した場合、そこでいったんリセットされ、その時点から5年を超過しないと無期転換申込はできません。しかし、いったん有期雇用契約を終了する必要があり、雇い止めの法理がそこで働くことになります。
最初から5年間の有期契約社員とする
最初から5年間の有期契約社員として採用し、しかも、更新はしないことを条件に雇用しておけば、更新されることも、無期転換されることもありません。但し、雇用期間中の解雇は「やむを得ない」場合以外にはできず、通常の解雇要件より厳しい制限がなされており、また、人事の硬直化を招くため、慎重な検討が必要です。
無期転換社員の正社員化
全員転換策と選択転換策
無期転換を申し込んだ社員に対し、転換後いかなる処遇を与えるかについては、申込社員全員を無期契約社員にする「全員転換策」と、申込社員から「正社員」としての採用申請があり、会社がこれを認めた場合には正社員に転換する「選択転換策」の2つがあります。
現状の企業の動向を見るに、全員転換策がはるかに優勢ですが、「選択転換策」をとる会社が次第に増えてきています。
限定正社員
近年、従来の意味での正社員と、限定正社員との2種類の正社員を、制度上設ける会社が増えています。
正社員とは、フルタイマーであって、かつ職種・職務、勤務時間、勤務地について一切限定がなく、企業にとっては業務上最も基幹的役割を担う社員のことを言います。これに対して限定正社員とは、雇用契約上、職種・職務、勤務時間、勤務地について一定の限定が設けられているものの、業務上基幹的役割を担う存在とされ、原則として定年までの雇用が前提とされている社員のことを言います。
近年、企業は、無期契約社員のモチベーション向上、ワークライフバランスへの配慮、人事の適切な配置等のため、従業員を、正社員・限定正社員・無期契約社員、有期契約社員に振り分けて、柔軟な人事管理を行うようになっています。
社員の種類を定める就業規則例
第●条(正社員軍の区分と各区分社員の定義)
- 正社員群は、職種・職務、勤務時間及び勤務地等に関する雇用条件の違いにより、正社員と限定正社員とに区分する。
- 正社員及び限定正社員は次の通り定義する。
- (2-1)正社員:雇用契約上、職種・職務、勤務時間及び勤務地等に関し全く限定がなく、業務上基幹的役割を負う正社員群
- (2-2)限定正社員:雇用契約上、職種・職務、勤務時間及び勤務地等について一定の限定があるが、業務上は基幹的役割を負う正社員群
選択転換策をとる場合の就業規則例
第●条(契約社員から正社員・限定正社員、無期転換社員への転換)
- 複数回の雇用契約により、有期契約の期間が継続5年以上となることが決まった契約社員の場合であって、正社員又は限定正社員への転換を希望する者について所属長の推薦がある場合には、会社はそれぞれの登用試験を実施し、合格した者について正社員又は限定正社員に登用する。
- 前項の登用試験は、毎年●月●日までに、所属長の推薦状を添付した本人の申込書を受け付けて、原則として翌年△月に実施し、その合格者については●月1日付で登用する。
- 複数回の雇用契約により、有期契約の期間が5年以上となることが決まった契約社員及びパートで、無期雇用契約への転換を希望する場合、次回更新の雇用契約より無期雇用の契約社員として継続雇用する。
無期転換後の労働条件
無期転換後の給与などの労働条件は、就業規則等で「別段の定め」がある部分を除き、直前の有期労働契約と同一の労働条件となります。「別段の定め」をする場合には、適用する就業規則にその旨を規定する必要があります。
その場合、重要なのは、定年・賞与・退職金についての定めです。就業規則として、正社員を対象とするものと、契約社員等を対象とするものがある場合、無期転換社員向けの新たな規定を定めておかないと、通常、「雇用期間の定めがない社員を正社員とする」といった定義が置かれているため、正社員に適用される、定年・賞与・退職金規定がそのまま無期転換社員に適用されてしまいます。
契約社員向けの就業規則の中に「本規則に定める契約社員には、無期転換社員を含むものとする」との規定を設け、無期転換社員にも契約社員向けの就業規則をそのまま適用するならば、前記の不都合は避けられます。ただ、就業規則内に、職務内容について限定がある場合、限定を解除すべきかどうか、正社員登用制度を新設するかどうか決める必要があります。
さらに、厚労相のパンフレットには「有期労働契約の更新時に、所定労働日や始業終業時刻などの労働条件の定期的変更が行われていた場合に、無期労働契約への転換後も、それまでと同様に定期的にこれらの労働条件の変更を行うことができる旨の別段の定めをすることは差し支えない」との見解が述べられており(「有期労働契約の新しいルールができました 労働契約法改正のあらまし」5頁③)、従来の就業規則を適用するだけでは、これに対応することができません。
無期転換者向けの就業規則を作成した場合には、これらの規程の対象となる社員を、正社員の就業規則の対象から除外しておく必要があります。
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