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時効一覧表債権回収時効一覧表
各種債権の消滅時効
民法が改正されました
平成29年の民法改正(平成29年法律第44号)により、令和2年(2020年)4月1日から新しい民法が施行されています。
新民法では、債権についての原則的な消滅時効期間を改め、客観的起算点のほかに主観的起算点からの消滅時効期間を置くほか、職業別の短期消滅時効を廃止するなど、債権の消滅時効について大きな改正がされていますが、全てのケースで新民法の規定が適用されるわけではなく、4月1日以降も旧民法の消滅時効期間に関する規定が適用される場合があるため、注意が必要です。
旧民法と新民法の消滅時効期間
具体的には、施行日(令和2年4月1日)前に債権が生じていた場合には旧民法の、施行日以後に債権が生じた場合には新民法の消滅時効期間がそれぞれ適用されます(改正法附則第10条4項)。
なお、施行日以後に債権が生じた場合であっても、その原因である法律行為が施行日前にされていたときは、「施行日前に債権が生じた場合」に含まれるため(同附則第10条1項カッコ書)、新民法ではなく、旧民法の消滅時効期間が適用されることになります。
例えば、施行日前に雇用契約を締結し、施行日以後に発生した労働災害に基づく損害賠償請求権については、雇用契約が原因である法律行為に当たり、雇用契約が施行日前にされているため、旧民法の消滅時効期間が適用されます。
不法行為に基づく損害賠償請求権
他方、不法行為に基づく損害賠償請求権は、上記と異なり、新民法の適用範囲が広がっています。具体的には、人の生命・身体の侵害による不法行為に基づく損害賠償請求権(例えば、交通事故に遭うことで生じた慰謝料などの損害賠償請求権)については、施行日時点で、旧民法に基づく消滅時効が完成していなければ、新民法が適用されます(附則第35条2項)。
例えば、平成29年(2017年)4月2日に交通事故に遭って怪我を負い、同日、その事故の加害者を知ったという場合、加害者に対する損害賠償請求権は、同日から3年の消滅時効期間が始まりますが、施行日(令和2年4月1日)時点では、まだ3年が経過していないため、新民法が適用され、消滅時効期間は令和4年(2022年)4月1日までとなります。
また、民法のほか、商法、労働基準法等の改正により、消滅時効に関する規定が変わっているものもあります。
定期金債権(家賃、年金、マンション管理費等)
- 弁済期
- 5年
- 旧民169
- 弁済期
- 10年
- 新民166Ⅰ②
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
病院の治療費(公立病院診療費も含まれる)
- 弁済期
- 3年
- 旧民170①
- 弁済期
- 10年
- 新民166Ⅰ②
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
工事業者・設計士報酬
- 弁済期
- 3年
- 旧民170②
- 弁済期
- 10年
- 新民166Ⅰ②
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
弁護士や弁護士法人に預けた書類の返還請求権
- 事件終了時
- 3年
- 旧民171
- 事件終了時
- 10年
- 新民166Ⅰ②
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
公証人に預けた書類の返還請求権
- 職務執行時
- 3年
- 旧民171
- 職務執行時
- 10年
- 新民166Ⅰ②
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
弁護士報酬(公証人報酬も同じ)
- 事件終了時
- 2年
- 旧民172Ⅰ
- 事件終了時
- 10年
- 新民166Ⅰ②
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
生産者、卸売・小売商人の商品代金
- 弁済期
- 2年
- 旧民173①
- 弁済期
- 10年
- 新民166Ⅰ②
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
注文により物を製作し、または自分の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする職人の報酬債権(近代工業的な機械設備を備えた製造業者の報酬債権は含まれない)
- 弁済期
- 2年
- 旧民173②
- 弁済期
- 10年
- 新民166Ⅰ②
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
塾等が生徒に対して有する教育、衣食、寄宿費債権
- 弁済期
- 2年
- 旧民173③
- 弁済期
- 10年
- 新民166Ⅰ②
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
大工、左官、植木屋等肉体労働を提供する者の報酬債権
- 弁済期
- 1年
- 旧民174②
- 弁済期
- 10年
- 新民166Ⅰ②
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
演芸を業とする者の報酬債権
- 弁済期
- 1年
- 旧民174②
- 弁済期
- 10年
- 新民166Ⅰ②
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
運送料金
- 運送品引渡時
- 1年
- 民174③ 旧商589、567
- 運送品引渡時
- 1年(除斥期間)
- 新商586
運送人への損賠賠償請求権(運送品の滅失等)
- 運送品受取日
- 1年
- 旧商589、566
- 運送品引渡日
- 1年(除斥期間)
- 新商585Ⅰ(裁判上の請求が必要)
旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の料金、消費物の代金または立替金
- 弁済期
- 1年
- 旧民174④
- 弁済期
- 10年
- 新民166Ⅰ②
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
貸ボート、貸衣装、レンタルビデオの延滞金のような短期の賃料(法文上は「動産の損料」)
- 弁済期
- 1年
- 旧民174⑤
- 弁済期
- 10年
- 新民166Ⅰ②
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
使用貸借、賃貸借の借主の用法違反により生じた損害賠償請求権
- 貸主への返還時
- 1年(除斥期間)
- 旧民600、621
- 借主の用法違反時
- 10年
- 旧民167Ⅰ
- 貸主への返還時
- 1年(除斥期間)
- 新民600Ⅰ、622
- 借主の用法違反時
- 10年(ただし返還時から1年は時効の完成が猶予される)
- 新民166Ⅰ②、600Ⅱ、622
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
使用貸借、賃貸借の借主の費用償還請求権
- 貸主への返還時
- 1年(除斥期間)
- 旧民600、621
- 借主の費用支出時
- 10年
- 旧民167Ⅰ
- 貸主への返還時
- 1年(除斥期間)
- 新民600Ⅰ、622
- 借主の費用支出時
- 10年
- 新民166Ⅰ②、622
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権
- 権利を行使することができる時
- 10年
- 旧民167Ⅰ
- 権利を行使することができる時
- 20年
- 新民167
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ②
不法行為に基づく損害賠償請求権
- 損害及び加害者を知った時
- 3年
- 旧民724前段
- 不法行為の時
- 20年
- 旧民724後段
- 損害及び加害者を知った時
- 3年(人の生命又は身体を害する不法行為の場合は5年)
- 新民724①、724の2
- 不法行為の時
- 20年
- 新民724②
商行為によって生じた債権
- 弁済期
- 5年
- 旧商522
- 弁済期
- 10年
- 新民166Ⅰ②
- 債権者が権利を行使することができることを知った時
- 5年
- 新民166Ⅰ①
手形裏書人の再遡求権
- 手形受戻日/訴え受けた日
- 6ヶ月
- 手70Ⅲ、77Ⅰ⑧
手形引受人に対する請求権
- 満期日
- 3年
- 手70Ⅰ、77Ⅰ⑧
手形所持人の裏書人及び振出人に対する請求権
- 満期日/満期後拒絶証書の日
- 1年
- 手70Ⅱ、77Ⅰ⑧
小切手所持人の裏書人、振出人等に対する遡求権
- 呈示期間経過時
- 6ヶ月
- 小51Ⅰ
小切手の再遡求権
- 小切手受戻日/訴えを受けた日
- 6ヶ月
- 小51Ⅱ
保険金請求権、保険料返還請求権、保険料積立金払戻請求権
- 被保険者の死亡、症状固定等支払事由の発生日
- 3年
- 保険95Ⅰ
- (平成22年3月31日以前に締結した保険契約に係るもの)
- 2年
- 平成22年法律第57号による改正前商法663
保険料請求権
- 保険料の支払期日
- 1年
- 保険95Ⅱ
- (平成22年3月31日以前に締結した保険契約に係るもの)
- 1年
- 平成22年法律第57号による改正前商法663
労働基準法上の賃金請求権
- 就業規則等に定められた支払期日
- 2年
- 労基115
- 就業規則等に定められた支払期日
- 5年(ただし、当面は3年)
- 労基115、143Ⅲ(令和2年法律第13号による改正後のもの)
- 改正後の規定が適用されるのは、令和2年4月1日以後に支払期日を迎えるものに限られる。
労働基準法上の災害補償請求権
- 具体的な権利発生時
- 2年
- 労基115
退職金請求権
- 就業規則等に定められた支払期日
- 5年
- 労基115
場屋営業者の客の寄託物に関する責任に係る債権(寄託物の滅失、損傷)
- 寄託物返還時/客の持去時/客の退去時
- 1年
- 旧商596Ⅰ、596Ⅱ
- 寄託物返却時/客の持去時/客の退去時
- 1年
- 新商598Ⅰ
物品運送業における船舶所有者(新商法では「運送人」)の傭船者、荷送人、荷受人に対する債権
- 弁済期
- 1年
- 旧商765
- 弁済期
- 1年
- 新商768、586
共同海損の分断に基づく債権
- 調査終了時
- 1年
- 旧商798
- 調査終了時
- 1年
- 新商812
船舶衝突を原因とする不法行為による損害賠償請求権(財産権侵害に限る。人身損害については民法の規定が適用される)
- 損害及び加害者を知った時
- 1年
- 旧商798Ⅰ、旧民724前段
- 不法行為時
- 2年
- 新商789
海難救助料
- 救助行為時
- 1年
- 旧商814
- 救助作業終了時
- 2年
- 新商806
- 「旧民」・・・平成29年法律第44号による改正前の民法
- 「新民」・・・平成29年法律第44号による改正後の民法
- 「旧商」・・・平成29年法律第45号及び平成30年法律第29号による改正前の商法
- 「新商」・・・平成29年法律第45号及び平成30年法律第29号による改正後の商法
時効期間が2以上あるものについては、いずれか早い方の期間の経過により、消滅時効が完成します。
判決で確定した権利の消滅時効期間は、上記表で10年より短い時効期間の定めがあっても、10年となります(新民169条1項)。
担保責任の存続期間
旧民法
担保責任の種類 | 担保責任の内容 | 起算時 | 存続期間 |
---|---|---|---|
売買の目的である権利の一部が他人に属する場合の売主の担保責任 | ・代金減額請求(旧民563Ⅰ) ・契約解除(旧民563Ⅱ) ・損害賠償請求(旧民563Ⅲ) |
買主がその事実を知った時(買主善意の場合) 契約時(買主悪意の場合) |
1年(旧民564) |
売買の目的物が制限物権(地上権、永小作権、地役権、留置権、質権)の目的である場合などの売主の担保責任 | ・契約解除(旧民566Ⅰ) ・損害賠償請求(旧民566Ⅰ) |
買主がその事実を知った時 | 1年(旧民566Ⅲ) |
数量を指示して売買した物に不足がある場合、物の一部が契約時に既に滅失していた場合の売主の担保責任 |
・代金減額請求(旧民565、563Ⅰ) |
買主がその事実を知った時(買主善意に限る) | 1年(旧民565、564) |
売買の目的物に隠れた瑕疵があった場合の売主の担保責任(瑕疵担保責任) | ・契約解除(旧民570、566Ⅰ) ・損害賠償請求(旧民570、566Ⅰ) |
買主がその事実を知った時 | 1年(旧民570、566Ⅲ) |
仕事の目的物に瑕疵があった場合の請負人の担保責任 | ・瑕疵修補請求(旧民634Ⅰ) ・損害賠償請求(旧民634Ⅱ) ・契約解除(旧民635本文) |
目的物の引渡し時(引渡しを要しない場合は仕事終了時) | 1年(旧民637Ⅰ) |
建物その他の土地工作物又は地盤に瑕疵があった場合の請負人の担保責任 | ・瑕疵修補請求(旧民634Ⅰ) ・損害賠償請求(旧民634Ⅱ) ・契約解除(旧民635本文) |
目的物の引渡し時 | 5年(旧民638Ⅰ本文) |
建物その他の土地工作物が石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の場合 | 目的物の引渡し時 | 10年(旧民638Ⅰ但書) | |
建物その他の土地工作物又は地盤の瑕疵により工作物が滅失又は損傷した場合 | 滅失又は損傷時 | 1年(旧民638Ⅱ) |
新民法
担保責任の種類 | 担保責任の内容 | 起算時 | 存続期間 |
---|---|---|---|
売買の目的物の種類又は品質が契約の内容に適合しないものである場合の売主の担保責任 | ・追完請求(新民562Ⅰ) ・代金減額請求(新民563Ⅰ) ・契約解除(新民564、415) ・損害賠償請求(新民564、541、542) |
買主がその不適合を知った時 | 1年(新民566本文) |
売買の目的物の数量が契約の内容に適合しないものである場合の売主の担保責任 | ・追完請求(新民562Ⅰ) ・代金減額請求(新民563Ⅰ) ・契約解除(新民564、415) ・損害賠償請求(新民564、541、542) |
期間制限なし(新民566本文の適用なし) | |
売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合の売主の担保責任(権利の一部が他人に属しておりその権利の一部を移転しないときを含む) | ・追完請求(新民565、562Ⅰ) ・代金減額請求(新民565、563Ⅰ) ・契約解除(新民565、564、415) ・損害賠償請求(新民565、564、541、542) |
期間制限なし(新民566本文の適用なし) | |
仕事の目的物の種類又は品質が契約の内容に適合しないものである場合の請負人の担保責任 | ・追完請求(新民559、562Ⅰ) ・報酬減額請求(新民559、563Ⅰ) ・契約解除(新民559、564、415) ・損害賠償請求(新民559、564、541、542) |
注文者がその不適合を知った時 | 1年(新民637Ⅰ) |
仕事の目的物の数量が契約の内容に適合しないものである場合の請負人の担保責任 | ・追完請求(新民559、562Ⅰ) ・報酬減額請求(新民559、563Ⅰ) ・契約解除(新民559、564、415) ・損害賠償請求(新民559、564、541、542) |
期間制限なし(新民637Ⅰの適用なし) |
新民法の施行日(令和2年4月1日)前に締結された売買や請負契約に基づく担保責任については、旧民法の規定が適用されます(改正法附則34条1項)。
商人間の売買については、買主は、目的物受領後遅滞なく検査を行い、目的物の瑕疵、数量不足を発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、これを理由として契約解除、代金減額又は損害賠償請求ができず、売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合でも、買主が6か月以内にその瑕疵を発見したときに限り、契約解除等ができるとされていました(旧商法526条2項)。これは、新商法においても、「瑕疵」が「契約の内容に適合しない(不適合)」に変わり、「契約解除、代金減額又は損害賠償請求」のほかに「追完請求」が加わったほかは、変わりありません(新商法526条2項)。
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