罰則

労働基準法上の罰則規定

「労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができ」ます(労基法101条)。臨検を拒み、妨げ、若しくは忌避し、その尋問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、帳簿書類の提出をせず、又は虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした場合は30万円以下の罰金を科されることになっていますので(労基法120条)、臨検等を受け入れざるを得ません。

労働基準法は、以下の通り多くの罰則該当事項があり、従業員の内部告発などにより罰則対象となる行為があるとの疑いが生じれば、労働基準監督官がやってきて、臨検監督が行われます。

違反が認められた場合はその場で是正指導・勧告が行われます。原則、臨検は事前に予告して行われますが、サービス残業の調査など抜き打ちで行われる場合もあるので常日頃から注意が必要です。さらに罰金も科せられます。

割増賃金(残業代)等の未払いがあれば、その支払をするよう求められますが、さらに裁判となると「付加金」の支払をしなければなりません。裁判所は、労基法20条(解雇予告手当)、同26条(休業手当)若しくは同37条(割増賃金)の規定に違反した使用者又は同39条7項(有給休暇中の賃金)の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる(労基法114条)。とあります。

例えば、割増賃金を500万円支払わなければならないとなると、同額の付加金の支払も求められますから、合計1000万円支払わなければならないのです(そのため、敗訴しそうな場合は最後まで突っぱることはせず、和解で終わらせなければいけません)。

同法102条は「労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法 に規定する司法警察官の職務を行う。」とあり、裁判所から令状を得て、逮捕し、自らの判断で送検することも可能です。実際にはあまり例がないようです。

117条 1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金

条文 義務・禁止事項 詳細
5 強制労働の禁止  

118条 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金

条文 義務・禁止事項 詳細
6 中間搾取の排除 業として他人の就業に介入して利益を得ることの禁止
56 少年労働の禁止
53 坑内労働の禁止 18歳未満労働者に対する禁止規定
64-2 坑内労働の禁止 妊娠中・産後1年女性、or指定有害業務についての規定

119条 6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

条文 義務・禁止事項 詳細
3 差別待遇の禁止 国籍、信条、社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件につき、差別的取扱をしてはならない
4 男女賃金差別禁止
7 公民権行使の保障 労働者が労働時間中に選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。
16 賠償予定禁止 欠勤について違約金等の禁止
17 前借金相殺の禁止 労働を条件とする前貸の債権と賃金との相殺禁止
18① 強制貯金の禁止 貯蓄の契約・貯蓄金を管理する契約の禁止
19 解雇制限 労災休業中、産前産後休業労働者の解雇禁止
20 解雇予告 30日前に解雇予告するか、日数不足分の解雇予告手当
22④ 就業妨害禁止 労働者の就業妨害目的で、第三者と通謀しての、国籍等関する通信、退職時証明書に対する秘密の記号の記入
32 時間外労働の禁止
34 休憩付与義務 45分~1時間の休憩時間を労働時間の途中に付与し、休憩時間は一斉に与え、休憩時間を自由に利用させる。
35 休日付与義務 週1回の休日付与
36①但 有害業務における36協定の制限 厚生労働省令で定める有害業務の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならない。
37 割増賃金支払義務 時間外労働、休日労働させた場合における割増賃金、60時間超労働部分に対する割増賃金
39 有給休暇の付与
61 18歳未満労働者の深夜業禁止
62 18歳未満労働者の有害業務禁止
64-3 危険有害業務 坑内労働以外の危険有害業務の就業制限(妊産婦)、妊娠出産機能有害業務(妊産婦以外)
65 妊産婦の就業制限 6週間又は14週間(双子)以内出産予定の女性から休業請求あった場合、産後8週未満女性の場合の就業禁止、妊娠女性から請求あった場合の軽易業務転換義務
66 妊産婦の時間外労働制限 妊産婦から請求あった場合の時間外労働就業禁止
67 育児女性休憩付与 1歳未満乳児を育てる女性に対する休憩付与義務
72 就業訓練未成年者の有害業務制限 70条による就業訓練を受ける未成年者労働者についての有害業務、坑内労働業務の就業制限違反
75 労災者に対する療養補償義務 労災に遭った労働者に必要な療養ないし療養費用を負担しなければならない。
76 同休業補償義務 前条による療養中の労働者に対する平均賃金6割相当の休業補償義務
77 同後遺症補償義務 労災による後遺症ある労働者に対する障害補償義務
79 同死亡保障 労災死亡者の遺族に対する平均賃金千日分の補償義務
80 同葬祭料支払義務 労働者が労災で死亡した場合の、葬祭を行う者に対する平均賃金の60日分の葬祭料の支払義務
94② 寄宿舎自治への干渉禁止 寄宿舎における寮長、室長等の役員の選任への干渉禁止
96 寄宿舎安全配慮義務 換気、採光、照明、保温、防湿、清潔、避難、定員の収容、就寝に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置を講ずる義務
104② 違法申告労働者の不利益取扱禁止 監督官庁、労働基準監督官に労働基準法違反を申告した労働者に対する不利益取扱の禁止義務
33 同条規定命令違反 労基署による、災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働者に対する、休憩、休日付与命令違反
40 同条規定省令違反 厚労省指定業務についての休日、休憩付与に関する督促に関する事項についての省令違反
70 同条規定省令違反 職業訓練を受けさせるに必要な、年少者、妊産婦等の危険有害業務、坑内労働の就業制限を緩和する厚生労働省令についての違反
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120条 30万円以下の罰金に処する。

条文 義務・禁止事項 詳細
14 有期労働契約における契約期間の制限 同条が定める3年ないし5年(専門業務)の期間制限を超過する契約を締結することの禁止
15① 労働条件明示義務 労働契約締結時の労働条件明示義務
15③ 帰郷費用支給義務 労働条件に差異があったことにより、退職した労働者に対する帰郷費用提供義務
18⑦ 社内預金返還義務 労基署から社内貯金管理を中止するよう命ぜられた場合における、労働者への遅滞なく返還する義務
22① 退職証明書交付義務 労働者から請求があった場合における、使用者の退職証明書交付義務(解雇の場合解雇理由の記載が必須)
22② 解雇理由証明書交付義務 解雇した労働者から請求あった場合の、解雇理由証明書の遅滞なく交付する義務(退職日前でも交付義務あり)
22③ 証明書への請求外事項の記載禁止 前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。
23 死亡・退職労働者に対する金品返還義務 退職又は死亡した労働者について、請求後7日以内の、賃金等労働者の権利に属する金品返還義務
24 賃金支払原則違反 通貨払の原則、直接払の原則、全額払の原則、毎月一回以上払の原則、一定期日払の原則に違反した場合
25 非常時払い原則 労働者が出産、疾病、災害等に遭った場合における、支払期日前の、賃金支払義務
26 使用者都合の場合の休業補償義務 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、休業期間中、平均賃金の6割以上の手当を支払う義務
27 出来高払賃金の一定額の保障義務 出来高払制による労働者に対し、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。
32-5② 週単位変形労働時間制・事前通知義務 1週間単位の非定型的変形労働時間制において、あらかじめ、1週間の各日の労働時間を通知する義務
33①但 災害時の時間外労働の届出懈怠 災害等により、時間外労働の臨時の必要があり、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合、事後に遅滞なく届け出なければならない。
38-2③ 事業外労働のみなし労働時間制・時間外労働協定届け出義務 事業外労働におけるみなし労働時間制における、「通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合」におけるみなし労働時間の労使協定の届出義務
57 18歳未満労働者について書類備付義務 18歳未満の労働者ある場合、戸籍証明書、学校長の就学に支障なき証明書、親権者の同意書の事業場備付義務
58 未成年について労働契約代理の禁止 親権者又は後見人の、労働契約について未成年を代理することは禁止される。
59 未成年の賃金の代理受領禁止 親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代って受け取つてはならない。
64 18歳未満被解雇者の帰郷旅費負担義務 18歳未満が解雇日14日以内に帰郷する場合における、旅費負担義務
68 生理による就業困難者の就業禁止 生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。
89 就業規則作成・届出義務 常時十人以上の労働者を使用する使用者の就業規則作成、労基署への届出義務
90① 就業規則作成・変更の意見聴取義務 就業規則の作成・変更についての、過半数組織労働組合又は過半数代表者の意見を聴かなければならない。
91 減給制限 1回の額が平均賃金1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期の総額の10分の1を超える減給制裁は不許
95① 寄宿舎規則の届出 寄宿舎規則の作成・届出義務。変更の届出義務
95② 同変更の同意取得 前項第一号乃至第四号の事項に関する規定の作成又は変更については、寄宿舎に寄宿する労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならない。
96-2① 寄宿舎設置等についての届出義務 常時10人以上の労働者ある事業所に付属して寄宿舎を設置、移転、変更する場合、省令で定める安全基準に従い定めた計画を、着手14日前までに届出る。
105 労働基準監督官の守秘義務違反  
106 就業規則等の周知義務 就業規則、社内貯金・通貨払適用除外・給与一部控除・変形労働時間・一斉休憩の適用除外・36協定・時間外休日労働の代休制度・事業外労働における所定外労働のみなし労働時間・裁量労働制・時間単位の有給休暇・有給休暇の時季の特定・有給休暇中の賃金計算方法に関する労使協定等の周知義務
107 労働者名簿の作成
108 賃金台帳の作成
109 記録の保管義務 労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類の3年間保存義務
70 同条規定省令違反 職業訓練を受けさせるに必要な、有期労働契約の期間制限を緩和する厚生労働省令についての違反
92② 同条規定命令違反 法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更命令に対する違反
96-3② 同条規定命令違反 労働者が、寄宿舎の安全確保のためになされた、労基署の命令に違反した場合
101 同条規定命令違反 臨検を拒み、妨げ、若しくは忌避し、尋問に対して陳述せず、虚偽の陳述をし、帳簿書類の提出をせず、又は虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした場合
104-2 同条規定命令違反 労基署の要求があったにもかかわらず報告不履行、虚偽報告、不出頭あった場合
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