- 弁護士による企業法律相談TOP
- その他の人事・労務知識
- 定年退職者への対応
定年退職者への対応高齢者雇用における法的留意点
- 高齢者雇用確保法は定年退職者についての継続雇用制度を定めていますが、以前は労使協定を結ぶことにより、継続雇用の対象者を限定できる仕組みがありました。しかし、平成25年に廃止されているため、それまでに協定を締結していないと、この制度は利用できなくなっています。
- これに代わるものとして、就業規則の中に「勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、従業員としての職責を果たし得ないとき」「精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき」は、継続雇用しないと規定することが考えられます。これは実質解雇に該当するため、労働契約法16条に従い、濫用的解雇は無効とされてしまいます。
- ただ、65歳になった時点で5年間雇用が継続していると、無期転換ルールが適用されてしまうため、第二種計画の特例認定を受け、これを防ぐ必要があります。
定年退職者に対する「対象者基準」は既に廃止済み
以前は、定年後の継続雇用制度を会社が設けている場合に限って、その対象者を限定できる仕組みがありました。この仕組は、会社が、継続雇用制度の導入を選択した場合、継続雇用の対象者を限定できる基準(以下「対象者基準」)を労使協定で定め、基準に合わない労働者を継続雇用の対象から除外することができました。
しかし、既に高齢者雇用確保法の改正により、対象者基準が廃止され、原則として希望する者全員を65 歳まで継続雇用の対象としなければならないことになっています。
経過措置によって「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組み」を利用するためには平成25 年3月31 日までに労使協定によって対象者基準を定めていることが必要なため、今になって、この仕組を利用しようとしてもできません。
定年退職者に解雇事由がある場合
ただし、定年退職者に解雇事由があるような場合には、継続雇用しないことができます。その場合を考え、次のような規定を設けるべきでしょう。
第●条
定年後も引き続き雇用されることを希望する従業員については、65歳まで継続雇用する。ただし、以下の事由に該当する者についてはこの限りではない。
- 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、従業員としての職責を果たし得ないとき。
- 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき
しかし、これは定年を機に、解雇する規定にほかならないため、労働契約法16条に従い「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして」継続雇用が認められないことになります。ただ、問題社員を選別し、退職を迫るきっかけに利用できるものと思われます。
雇用管理に関する措置とは
60歳で定年となり再雇用された社員に対して、無期転換ルールを排除する仕組み
「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」により定年(60歳以上のものに限る)後も引き続き雇用される有期契約社員は「第二種特定有期雇用労働者」と呼ばれ、認定を受けることにより、対象社員は65歳を超えたからといって、無期転換申込みをすることができないことになります。
第二種計画の策定の必要
ただし、特例の適用を受けるためには、労働者に対する配置、職務および職場環境に関する配慮等を記載した「第二種計画」を作成し、都道府県労働局に申請し、厚労相の認定を受けることが必要です。
計画内容としては、①高年齢者雇用推進者の選任、②職業訓練の実施、③作業施設・方法の改善、④健康管理、安全衛生の配慮、⑤職域の拡大、⑥職業能力を評価する仕組み、⑥資格制度、専門職制度等の整備、⑦職務等の要素を重視する賃金制度の整備、⑧勤務時間制度の弾力化、のうちのいずれかの実施が必要不可欠です。いずれか一つでよいので、通常一番対応の用意な「①高年齢者雇用推進者の選任」が選択されることが多いでしょう。
各社員に書面明示の必要性
また、第二種計画の特例認定を受けた場合には、会社は労働契約の締結・更新時に対象者に、定年後引き続いて5年超雇用されても無期転換申込権が発生しないことを書面で明示することが必要です。
その他の人事・労務知識 メニュー
人事・労務 メニュー