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血縁上・法律上の親子関係
2014年7月29日に文化放送「くにまるジャパン」に出演した際に話した内容を掲載しています。 テーマは「血縁上・法律上の親子関係」です。
- パーソナリティ
- 今週は法律上の「親子関係」についてのお話です。つい先日、父親と子供に、DNA鑑定で血縁関係がないと証明されても法律上の親子関係を否定できない、という最高裁判所の判決が出ました。ちょっとわかりにくい話ですが、詳しく教えていただけますか?
- 弁護士
- ほぼ同じ内容で争っていた、北海道と関西のケースについて、今月17日に、最高裁の判決がでたんです。
前提として、民法には「婚姻中に妻が妊娠した子供は、夫の子供であると推定される」という「嫡出推定」という定めがあります。
これらのケースでは、妻が、夫以外の男性の子供を妊娠・出産。その後、北海道の事件では、子供が1歳のときに、子供を連れて離婚、関西の事件は子供が2歳のときに、子供を連れて別居しています。 - パーソナリティ
- 夫と離婚、別居したあとは?
- 弁護士
- その後、妻と子供は、子供の血縁上の父親である男性と一緒に現在までそれぞれ、3年と4年にわたって暮らしています。また、DNA鑑定の結果、一緒に暮らしている男性が父親である確率が99.99%と出ています。
そこで女性が、法律上の父親と血縁上の父親が異なるということで、子供を代理して夫と子供の間に親子関係が「不存在」…存在しないことを確認する訴えを起こしたのです。 - パーソナリティ
- DNA鑑定の通りでいいような気がするんですが…。
- 弁護士
- 地方裁判所と高等裁判所は、DNA鑑定の通りの判決でした。ところが、最高裁では、法律上の親子関係を否定することはできない…という判決になったのです。
- パーソナリティ
- 地裁、高裁と最高裁で違う。どういうことですか?
- 弁護士
- 判決文を紹介します。
「夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり、かつ、子が、現時点において夫の下で監護されておらず、妻及び生物学上の父の下で順調に成長しているという事情があっても、子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではない」
子供の身分関係の法的安定を重要視する観点から、一度決まった法律上の父と子の関係を後から変えるのはよくない、という判断です。 - パーソナリティ
- 以前、代理出産で親子関係が認められるのか、という裁判も話題になりましたよね。
- 弁護士
- 夫の精子と妻の卵子を使って、アメリカ人の代理母に妊娠・出産を依頼した、というケースでした。こちらは法律上の夫婦であり、血縁上もその夫婦の子供。でも、民法は出産の事実で親子関係を認めるので、日本における法律上の母は、アメリカ人の代理母なんです。
この裁判でも「自分の卵子を提供していようと、今の民法では、母子関係の成立は認められない」と、法律の定めに厳格に沿った判断になっています。 - パーソナリティ
- 当然と言えば当然かもしれませんが、裁判所は、法律通りに判断するんですね。
- 弁護士
- そうなんです。
実は、今の民法は、明治時代の民法と基本的に変わっていません。DNAはおろか、血液型も知られていない時代の法律なので、今の時代にはそぐわない面もあると思います。 今回の最高裁判決の補足意見でも、生物学上の親子関係が明らかにできるようになった社会状況の変化に応じて、法律を再検討すべきかどうかが問われている…というふうに指摘されています。 - パーソナリティ
- 親子関係は、子供の一生を左右する重要なことですもんね。
- 弁護士
- はい。法律の考え方や、科学技術の視点、さらに国民感情も踏まえた上で十分に議論をしたうえで、国民の代表である国会議員により、法律を作っていく必要がありますね。
- パーソナリティ
- あくまでも法律をつくるのは国会ですからね。ありがとうございました。
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